2020/07/08 21:54

goodspeak zeroでは週一のzoomコンテンツだけでなく、日々magazineをお届けしています。 世界中で有名なスピーチを取り上げ、そこに使われている技法や、表現方法などを分析します。日々の仕事にも生かせるポイントをまとめています。
以下にコンテンツの一例を掲載いたしますので、ぜひご覧下さい!

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名スピーチ紹介:
Martin Luther King Jr.(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)
死の前日のスピーチ“I've Been to the Mountaintop”
動画URL: https://www.youtube.com/watch?v=X1TJvcZFTc4
担当:有馬優


「キング牧師」の名で知られているマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者として活躍し、ノーベル平和賞も受賞した人物です。”I Have a Dream”の演説が有名ですが、ここでは、キング牧師が暗殺される前夜に語った”I've Been to the Mountaintop”から、大衆を熱狂させたスピーチの技法について探っていきます。


0:00〜
“All we say to America is, “Be true what you said on paper.”
私がアメリカに対して言うべきことは「憲法の定めた事に忠実であれ」ということです。)ここでは日本語訳で見ていきましょう。冒頭で倒置法が用いられています。普通の語順だと、「私はアメリカに対して『憲法の定めた事に忠実であれ』と言いたいです。」となるところですが、「私がアメリカに対して言うべきことは」と前置きすることで、その後に続く「憲法の定めた事に忠実であれ」というメッセージを強調しています。日本語の場合には、これを二つの文に分けると効果的です。「私がアメリカに対して言うべきことはただ一つ。『憲法の定めた事に忠実であれ』ということです。」といった具合です。「ただ一つ」の後で一呼吸置けば、聞き手は「なんだろう?」と注目しますね。マライア・キャリーのクリスマスソング”All I Want For Christmas Is You”も同じ形で、「クリスマスにはあなたが欲しい」ではなく、「クリスマスに欲しいのは、あなただけ」という倒置法を用いることにより、情熱的な印象になっています。


0:35〜
“But somewhere I read of the freedom of assembly. Somewhere I read of the freedom of speech. Somewhere I read of the freedom of press. Somewhere I read that the grants of America is the right to protest for right.”
しかし、どこかで私は集会の自由のことを読んだのです。どこかで私は言論の自由のことを読んだのです。どこかで私は出版の自由のことを読んだのです。どこかで私はアメリカの偉大さは正義の為に抗議する権利であることを読んだのです。)ここでは、同じ言葉を繰り返す反復法を用いています。「どこかで私は〜読んだのです」というフレーズを畳み掛けるように使うことで、聞き手の共感を少しずつ高めていく効果があります。このスピーチでは、最初に「集会の自由」「言論の自由」「出版の自由」という3つの事柄を並列の関係で結び、4回目で登場する「アメリカの偉大さは正義の為に抗議する権利である」という主張を引き立てる構成となっています。帰宅した旦那さんに対して「お風呂にする?ご飯にする?それとも私?」なんていう奥さんのフレーズを耳にしたことがあるかも知れませんが、実はこれも反復法です。「お風呂」と「ご飯」は並列の関係、そして最後の「私」が主張となって構成されています。


2:06〜
“I may not get there with you. But I want you to know tonight, that we, as a people, will get to the promised land!”
私は皆さんと一緒にそこに辿り着けないかもしれません。しかし、今夜皆さんにこのことを知っておいていただきたいのです。私たちはひとつの民として必ずや約束の地に辿り着くことを!)いよいよクライマックスです。ここでは主語に注目しましょう。これまで「私」で語られてきたスピーチに、「私たち」という主語が登場します。「国民」と置き換えることもできそうな文脈ですが、「私たち」という言葉によって、キング牧師自身と、このスピーチを聞いている人たちの仲間意識が強調されます。日本語は、主語のバリエーションが豊かな言語です。『吾輩は猫である』の英語版が”I am a Cat”であるように、日本語では、一人称だけでも「私」「俺」「おいら」「アタシ」など、印象の異なる表現がたくさんあります。企業内でプレゼンする場合も、「当社」「我が社」「私たち」など、何気なく使っている主語の効果を検討してみてください。因みにこのあと、キング牧師は5秒以上「間」を空けて、湧き上がる歓声と拍手を受け止めてから次の言葉に入っていきます。全体を通して、聴衆の反応を見ながら適切に「間」を置いているところも、このスピーチの良さと言えるでしょう。


<今回のポイント>
・倒置法で伝えたいメッセージを強調する。
・反復法で聞き手の気持ちを盛り上げる。
・主語を工夫して聞き手の心を掴む。

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