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写真:緑色のキャップがサカナヤマルカマの上田さんと狩野さん。黄色のキャップのバイヤーさんと買う魚の打ち合わせ中です。
明け方の小田原港。「魚の伝道師」上田勝彦さんがやって来た
魚屋の仕入れに同行させてもらう――。鮮魚部の仕入れ担当である僕にとっては大きな学びの機会をもらった。しかも、普通の魚屋ではない。低利用魚も丁寧に下処理して顧客に食べ方を伝えながら販売しているサカナヤマルカマ(鎌倉市。以下マルカマ)が、同じ神奈川県内にある小田原漁港の市場に行くというのだ。
マルカマについては今年1月にも企画・広報担当の狩野真実さんへの取材記事を書かせてもらったばかり(こちらです)。いろんな魚を美味しく学びながら面白い人とつながりたい僕にはその運営スタイルがあまりに興味深く、スタッフ全員にインタビューしたいと思っている。
まず会いたいのは元漁師にして元水産庁職員の上田勝彦さん。マルカマには「アドバイザー」という一般的な肩書きで参加しているが、「魚の伝道師」という唯一無二の異名で全国的に知られている。彼の著書『ウエカツの目からウロコの魚料理』(東京書籍)は僕の魚料理バイブル。応用が利くように書かれているので、読み返すたびに「煮ることの意味ってそうだったのか! なるほど~」などと発見がある。
小田原にはいいサイズの真鯛や甘鯛がある!と興奮したのですが、よく見たら別産地から送られた魚でした。
「珍しい魚や未利用になりそうな魚をあえて買って売っている。マルカマは面白い小売店だよね」
待ち合わせは朝5時過ぎに小田原港の魚市場。2月中旬のこの日は時化の影響で出漁する船が少なく、狩野さんによれば近海で獲れた新鮮な魚は普段の半分以下らしい。僕の目にはたくさんの魚が並んでいるように見えたが、あれは他の漁港から回ってきた「送り」ものだったのだ。
それでも上田さんと狩野さんはお揃いの緑色のキャップをかぶって登場。後から聞いたところ、競りに参加する権利はない人の証らしい。上田さんの教え子である内藤さんが小田原のローカルスーパー「ヤオマサ」でバイヤーをしており、マルカマの理念に共感して上田さんたちが欲しい魚を代わりに競り落としてくれるという。強力な助っ人だ。
「珍しい魚や未利用になりそうな魚をあえて買って売っている。マルカマは面白い小売店だよね」と内藤さん。そんなヤオマサも顧客から「水族館みたい」と称されるほど数多くの魚種を並べているらしい。客のニーズに応えるだけでなく、その潜在的なニーズを掘り起こしたり育てたりするのが本当のプロなのだと思う。
活けで仕入れた魚に神経締めと血抜きを行っている魚屋さんと談笑する上田さん。市場はプロたちが情報交換をする場でもあります。
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