2024/03/19 18:45
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写真:サカナヤマルカマの前にて。路上でのインタビュー中も常連客と自然な感じで接しているのが「営業・広報」の狩野真実さんです。

鎌倉の消費者と阿久根の水産関係者を直接つないで双方をハッピーにする

 月2ペースで魚介類を多めに仕入れてさばき、飲み食い好きの友人知人に我が家まで買いに来てもらっている。この「鮮魚部」の主目的は、味覚の合いそうなご近所さんとの交流と僕の魚さばき技術の向上だ。よく売れたら我が家の魚代は無料になったりする。我ながら、楽しくて美味しくてお得な趣味を開発したと思う。仕入れやさばきの苦労と喜びを語り、「魚屋さんみたいだね」と言ってもらったりするのも誇らしい。僕は周囲に支えられて魚屋ごっこをやっているのだ。
 ごっこではなく本物の魚屋を始めてしまった人がいる。神奈川県鎌倉市の消費者と鹿児島県阿久根市の水産関係者を直接つないで需要と供給を満たしながらそれぞれの地域課題の解決も目指す、という「サカナヤマルカマ(以下マルカマ)」事業にまい進する狩野(かの)真実さんだ。
 アドバイザーは「魚の伝道師」こと上田勝彦さんだという。元水産庁職員にして元漁師でもある上田さんの著書『ウエカツの目からウロコの魚料理』(東京書籍)を僕は何度も読み返しているのだ。あのウエカツさんと一緒に活動できるなんてめちゃ羨ましいんですけど……。
 狩野さんはマルカマの発起人の一人であり、仕入れから販売までを手がけながら広報などのバックオフィス業務を担っているらしい。鮮魚部の記事を貼り付けてメールで取材依頼をすると、快諾の後に<一橋の先輩とのこと!(私は2003年商学部卒です)お会いできるのを楽しみにしています>とのメッセージも添えてあった。
 狩野さんと僕は出身大学だけでなく、新卒入社もアパレル企業だったという点も共通している。僕の場合はユニクロを1年で逃げ出すように辞めてしまったのだけど、狩野さんは10年以上アパレル業界で働いていたようだ。そのキャリアは今に必ず生かされているはずだ。ちょっとだけ嫉妬心を抱きながら会いに行くことにした。

マルカマのある鎌倉市今泉台の商店街。閑散としています。今泉台の高齢化率は45%にまで上昇しており、買い物難民などの課題を抱えているそうです。

五島列島の漁業関係者と東京で働くバリキャリ独身女性を引き合わせる婚活イベント

 鎌倉市といっても、マルカマの店舗があるのはいわゆる観光エリアではない。今泉台という高台の住宅地で電車の最寄り駅はない。JR大船駅からバスに20分ほど乗り、「北鎌倉台」の停留所で降りた。
 訪れたのは平日の昼下がり。北鎌倉台商店街は空き店舗が目立つ。いわゆるシャッター街だ。今泉台はキレイな一軒家が多い住宅地だけど、これでは車の運転ができない人は生活に苦労するだろうなと思った。
 でも、商店街内のマルカマには早くも買い物客がいて、ちゃきちゃきしたお姉さんが接客をしていた。狩野さんのようだ。さっそく取材をさせてください、写真も撮りますとお願いすると、化粧を手早く直して出て来てくれた。お店の前に置いてある椅子に座り、現在に至る経緯を井戸端会議風に聞いた。
「出身は栃木県ですけど、地元にあまり愛着はありません。心の故郷は長崎県です。新卒でオンワード(樫山)に入って6年ほど働き、上司に誘われてキットソンというブランドに転職しました。独立したのは2017年の春です」
 会社員時代に編集者の旦那さんと結婚した。その頃に手がけていた「島コン」は旦那さんの発案だ。五島列島の漁業関係者などの男性と東京で働くバリキャリ独身女性を引き合わせるという豪快な婚活イベントである。3年間で10回弱開催し、結婚カップルも複数誕生したという。
「(夫婦ともに)生命力があればどこでも生きていけると思いました。私は基本的に男女関係のうんぬんが好きで(笑)、違うものをかけ合わせて双方がハッピーになることに興味があります」
 この企画は大手旅行会社主催で現在も続いている。結婚して鎌倉に移り住んでいた狩野さんと旦那さんはさらに「〇〇と鎌倉」というプロジェクトを思いつく。鎌倉市と日本各地の地域との交流を促すもので、その一つが阿久根市だった。現在のマルカマはその縁が発展したものだ。

マルカマの実店舗のオープンは2023年4月。期間限定の移動販売をするなど準備に約5年間かけたそうです。事業を軌道に乗せるまで狩野さんは店頭に立ち続けることでしょう。

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