2022/07/28 11:28
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写真:育て始めて3週間目ぐらいの大葉。すでに収穫しちゃっています。右は根っこから植えてみた細ネギです。

さばきたての魚。つまを添えて美味しそうに出したい

 月2ぐらいのペースで鮮魚部活動をしている。漁師などから僕が魚を仕入れてさばき、我が家を含む10世帯(最近になって2世帯増えました)に小分け販売するのだ。時給100円ぐらいの「労働」だけど、魚について学べて食べもの好きの部員とおしゃべりできるのがひたすら楽しい。
 売れ残った魚はお世話になっている人にお裾分けすることもあるが基本的には妻に買ってもらい、自宅で僕が料理する。それでも残ったらフリーザーパックに入れて日付を入れて冷凍。どんどん増えるので忘れないうちに解凍して食べなくてはならない。
 この鮮魚部活動はなくても週1では丸の魚をおろしたい。せっかく覚えかけている包丁の腕を鈍らせたくないからだ。近所の魚屋に行き、鱗と内臓だけは取ってもらったものをさばいて料理して、妻や友人に食べてもらっている。
 こんな生活なので、3日に1度ぐらいのペースでなんらかの魚料理を作っている。まだバリエーションは少ないけれど、妻や料理本に教えてもらってコツのようなものをつかんできた。料理は味の次にぐらいに器と盛り方が大事で、つまを添えて上手に盛ればそれだけで美味しそうに見えて気分も上がるのだ。

以前にパクチー栽培の失敗したときの残骸。スコップ、支柱、軽石などは再利用できそうです。

やたらに使う大葉。その都度購入するのはもったいない

 魚は基本的に赤、白、黒の3色で構成されている。だからこそ、野菜の緑色が映えて、刺身などを引き立ててくれる。大葉(青紫蘇)やミョウガなどの薬味は爽やかな苦みが魚の生臭さを抑えてくれる。消化にも役立つらしい。
 僕が特に好きなのは大葉だけど、その都度購入するのは面倒臭いしもったいないと思う。そういえば、東京の杉並区で一人暮らしをしていたときはアパートの裏に大葉が自生していたぞ。使う分だけ新鮮な葉をちぎっていた。あの頃は便利で楽しかったな。愛知県の田舎町で同じことができないはずはない!
 残念ながらうちのマンションは地面がすべてコンクリートで覆われている。周囲には空き地がたくさんあるけれど、勝手に大葉を植えて育てたら変人扱いされそうだ。
 幸いなことに日当たりはいいのでベランダでのプランター栽培という手もある。でも、僕には苦い思い出がある。数年前に「パクチーが好きなのに高すぎる。栽培しよう!」と言い出して妻と一緒にプランターを買い、葉の部分を使った後の根っこを植えたことがあるのだ。数日後、まったく伸びずに枯れてしまい、土がカラカラに干上がったプランターが残ってしまった。

ホームセンターで大葉の苗を選んでくれるクメくん。集中力抜群の頼れる男です。娘さんは興味なさそう……。

緑の手を持つ男! 実家が造園業のクメくん登場

 ここは先達の助けが必要だろう。僕には強い味方がいる。以前はうちのマンションに住んでいて、今は近所で一軒家を建てて家族で暮らしているクメくんだ。若い頃はプロのサーファーを目指していて、生活のために銀行員をしている今でも海が恋しくて暇を見つけては釣りに行っているらしい。僕も年に一度は浜名湖でのボート釣りに連れて行ってもらっている。
 クメくんの実家は愛知県内で造園業を営んでいる。彼は家業を継いでいないが、ガーデニングぐらいなら余裕のようだ。実際、自宅には自分で木を植えて、キュウリやピーマンを上手に育てている。やっぱり血は争えないね。久米くん、我が家のプランター栽培も手伝ってくれない?
「私ですか? 野菜のプロでもなんでもないですよ……。まあ、買い物ぐらいならばお手伝いしますけど」
 実務能力は高いのだけど謙虚で常識的。だけど優しいので頼られると断わり切れず、実は遊び心もある面白がり。僕の周囲にやたらに多い長男長女タイプの特徴だ。クメくんはその典型例であり、やりたいことは「お兄ちゃんお姉ちゃん」と一緒に実現したい僕(次男かつ中間子)との相性は良いと勝手に思っている。

クメくんは自宅から軽石や網を持って来てくれました。用意周到だね!

プランター栽培の費用は2600円。何回収穫すれば元を取れる?

 週末は子どもの世話もしなくちゃいけないというクメくん。可愛い娘さんたちと僕を車に乗せて向かったのはホームセンター。彼によれば、なるべく深めのプランターを購入し、培養土をたくさん入れることが大切らしい。なるほどね。よくわからないけれど、クメくんが選んでくれたものを買うよ!
 30分も経たずに買い物は終わった。プランターは1400円ぐらい。25リットルの培養土を2袋で800円。大葉の苗は2つで300円。そして、ペットボトルに取り付けるタイプのジョウロを100円ショップで買い足した。合計2600円ほどだ。意外と安い。「大葉を買い忘れたけど、それだけのためにスーパーに行きたくない」という事態を考えたら、10回ぐらい収穫できたら元が取れた気分になるだろう。
 我が家に戻り、クメ家の子どもたちには妻が買ってきたジュースを与えておき、大葉の苗をさっそくプランターに植えることにした。クメくん、その網は何?
「潮干狩りで使う網です。この中に軽石を入れてプランターの下に平らにして敷きましょう。土の水はけを良くするためです」
 そういえば、購入したプランターには下部に水が溜まるように設計されている。野菜が根腐れしないように工夫しなければならないようだ。

バッチリ準備してもらった状態で苗を植えました。記念樹を植える社長になった気分です。クメくんは後ろで真剣に作業中

土はたっぷり入れて、苗は深めに埋める。水の与え過ぎに注意

 培養土は思った以上にたくさん入れた。プランターの内側には土を入れるラインのようなものがあるけれど、クメくんはそれを無視してどんどん土を投入。水をかけると空気の分だけ土は凹むからだろう。自然の状態に近づけるためにも土は多いほうが良いのだ。
「深めに穴を掘って苗を植えてください。水は8リットルぐらいたっぷりかけましょう。1カ所に集中しないようにまんべんなく!」
 クメくんの口調が真剣みを帯び始めた。ここがプランター栽培の肝なのだろうか。プランターに移植したばかりの大葉は2つともか細く頼りなく見えた。大丈夫かなあ。もっと水をあげる?
「いえ。水の与え過ぎは良くありません。今後は3日に一度ぐらいでいいでしょう。土と葉の状態をよく見ることで水やりの感覚はわかります。葉の裏側はときどき霧吹きをかけてあげれば虫がつきにくくなりますよ」
 ふーむ。そういうものなのか。1週間ぐらいしたら収穫できるかな?
「大宮さん、よく考えてください。植物は葉で光合成をしているんです。1か月ぐらいは収穫をせず、しっかりと根を張るのを待ちましょう」
 完全にプロ農家の目になっているクメくん。申し訳ないけれど、この言葉は聞かなかったことして2週目以降は大きめの葉を数枚ずつ収穫させてもらっている。そのせいなのか「身長」は伸びずにやたらに横に広がって成長している気がする。

植えたばかりの大葉の苗。あまりに小さくて水をかけたら曲がってしまいました。心配だな……。

大葉は今日も元気かな? ベランダに出るだけで気分が良くなる

 プランター栽培開始から1か月後、クメ一家を我が家に招いた。大葉を添えた魚料理を食べてもらいつつ、今後の栽培に関するアドバイスを聞きたい。すでに収穫しちゃっているけれど、やっぱりマズかった?
「いえ。大丈夫ですよ。すっかり大きくなりましたね。肥料はやりましたか? 油かすがいいと思うのですが、私もよく知らないので調べておきます」
 ネット情報によれば、大葉は通気性を良くすることも大事。伸びてきたら根元近くの茎を取り除くように収穫すると良いらしい。そして、11月ごろになると枯れてしまうようだ。少なくともそれまでは大葉には困らない生活ができる。
 勉強の余地が大いにあるプランター栽培。でも、すでに新鮮で香りのいい大葉を何度も収穫できているし、想定外の副次効果も発見した。大葉の様子を見るためにベランダに出るだけで気分が良くなることだ。
 普段、僕は家の中に引きこもって原稿を書いている。それが仕事なのだから仕方ないけれど、息抜きの時間も居間のソファで転がっていることが多くて不健康だ。散歩もしているが、着替えて鍵を持って靴を履いて外出するのにはちょっとした気合がいる。
 ベランダに出るだけならば何の準備も要らない。しかも、そこには昨日よりも明らかに成長した大葉がいるのだ。太陽光を浴びながら大葉をツンツンして様子を見て、少し収穫して匂いをかいだりする。気分爽快だ。
 魚をさばけるようになりたい一心で始めた鮮魚部活動。楽しく続けていると、調理用具や食器も揃えたくなる。刺身のつまも育て始めてしまった。今後も意外な展開に身を任せ、周囲を巻き込んでいこうと思う。(了)

黒鯛とカレイの刺身に添えて。どちらも色鮮やかさに欠ける魚なので大葉が有効。新鮮なので肝も生で食べちゃいます。大葉が解毒剤になってくれるでしょう。

自宅でたまにつくる納豆卵パスタにも大葉を刻んで混ぜました。爽やかな風味で満足感アップ!

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