こんにちは!インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)広報の屈橋です。
ぐんぐんと秋の香りを感じる10月。ふと頬を撫でていく風が随分さらりとし始めたなあと思います。とはいえ、季節の変わり目。
食欲の秋、芸術の秋、読書の秋と楽しい事満載なこの時期を満喫すべく、健康第一で身体を労わって過ごしていきましょう。
さて、今号では、先日発表した文部科学省のSBIR事業のステージゲート審査通過についてお届けします。
今回のお品書きはこちら。
★文部科学省SBIR事業のステージゲート審査通過!新たに最大46.3億円の交付が決定しました
★ファンクラブトップページをリニューアルしました
文部科学省SBIR事業のステージゲート審査通過!新たに最大46.3億円の交付が決定しました
昨年よりISTが支援をいただいていた文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」ですが、先日ステージゲート審査を通過し、新たに最大46.5億円(申請満額)の補助金交付が決まりました!今号では、ステージゲート審査通過に至るまで、この1年間でISTのロケット開発や会社全体がどのように前進してきたのかをダイジェストでお届けします!
▼プレスリリース:文部科学省のSBIR事業で新たに最大46.3億円の交付が決まりました
https://www.istellartech.com/news/press/9444
▼SBIR制度とは?
SBIR(Small Business Innovation Research)制度は、スタートアップ等がもつ先端技術の社会実装の促進を目指す制度です。
文部科学省が2023年度から2027年度までの5年間実施する「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の「民間ロケットの開発・実証」プロジェクトでは、2028年度以降に国内の衛星が政府、民間を問わず基幹ロケットまたは民間ロケットを候補として打上げを検討できるだけでなく、海外の需要も取り込めるようにすることが目標になっており、選ばれた民間ロケット事業者は2027年度までに軌道上まで人工衛星を打ち上げる実証を成功させることが条件になっています。宇宙輸送(民間ロケットの開発・実証)の予算は350億円、2027年度までの合計で1社あたり最大140億円が交付される非常に大きな宇宙政策です。
本事業は、マイルストンペイメントと呼ばれる、一定の中間目標を達成するごとに支援金が支払われる方式となっています。ISTは2023年9月に採択され、フェーズ1(交付額最大20億円、4社)と呼ばれる第一段階を経てステージゲート審査を通過し、さらなる補助金交付となりました。
▼ISTがこの1年間で達成したこと
フェーズ1の期間内にISTが行ったロケット開発や組織、事業開発の一部を裏話も交えながら、あらためてご紹介したいと思います。
・新たな燃焼試験設備で、エンジン燃焼器単体試験に成功!
2023年12月〜1月はZEROのロケットエンジンCOSMOSの燃焼器単体試験を行っていました。
ZEROでは世界的にもまだ例が少ないロケット燃料であるメタンを採用しているため、LC-0内にエンジン燃焼試験棟を新しく作り、試験に臨みました。本試験では、地元大樹町にある牧場の牛のふん尿から製造した液化バイオメタン(Liquid Biomethane、以下LBM)を燃料として初めて使用し、LBMが十分な性能を有していることも確認できました。バイオメタンによる燃焼試験実施を発表しているのは、欧州宇宙機関(ESA)が開発しているロケットエンジンに続き世界2例目、民間ロケット会社としては初めてとなり、国内や海外メディアでも広く取り上げられました!
実はこのエンジン燃焼試験の裏では、本社の裏にある構造試験棟で推進剤タンクの耐圧試験・破壊試験も進んでいました!このように開発・試験を同時並行で進行できるチーム体制を作ることができたことが最大の成果ともいえます。開発速度のギアが確実に一つ上がりました。
この推進剤タンクは、最終行程の溶接から試験までを自社施設で行い、高度な技術が求められるアルミ溶接技術を獲得でき、試験のオペレーションについて知見を得ることができました。
・最難関と言われるロケットエンジンの心臓部「ターボポンプ」、サブスケールモデルでの開発が完了!
ターボポンプは、燃焼器に燃料と酸化剤を送る”心臓部”に当たり、ロケットエンジンの中でも最も開発が難しい要素の一つと言われています。ZEROでは燃料ポンプと酸化剤ポンプを一体化させた「一軸式」を採用。燃料と酸化剤それぞれでポンプを分ける場合と比べて技術的な難度が高い一方、エンジンシステム全体の小型・軽量化や部品点数の削減による低コスト化につながるという利点があります。
ターボポンプ試験は、冷走試験シリーズを2回、熱走試験シリーズを1回行い、所定の性能を達成し、サブスケールモデルでの開発を完了!ISTはターボポンプの開発技術を取得し、基幹ロケット関連企業以外では国内で唯一、その技術を保有する会社となりました。
これらの試験と並行して、既にフライトに向けた開発モデルの設計は完了し、現在は組立工程に入り、今冬には同モデルでの試験を計画しています。
・フェアリング、アビオニクス、段間分離機構など、同時進行で進む各コンポーネント開発
エンジンと並行して、ロケットの各コンポーネントの開発も進んでいました。
衛星フェアリング真空引き試験では、飛行時に風圧によって生まれるフェアリングの外側と内側の圧力差に耐えうる強度が十分にあることを確認できました。本社裏にある気密試験棟で実験を行い、安全に最小人数で効率的な試験を行うことができました。
アビオニクスシミュレーターというロケット機体全体の電子回路を早い段階から組み上げてさまざまな条件でテストすることができる装置も開発しました。国内の宇宙業界では珍しい、モデルベース開発を可能にする可能な環境を実現しました。開発初期からこのシミュレーターを使ってテストすることで、ソフトウェアのバグを早期に見つけられ、作業の出戻りも少なくなり、開発スピードの向上やそれによるコストダウンにもつながります。
ロケットの1段目と2段目を切り離すための段間分離機構の開発では、2段を押し出すための装置(エアシリンダ)の性能評価試験も実施しました。ZEROでは、2段の押し出しに必要な力のバネだと重くなってしまうため、軽く作れるエアシリンダを採用しています。本試験では、事前のシミュレーションを活かしたシステム設計により、設計・試験のプロセスを大幅に短縮、実験結果からシミュレーションの正しさも検証できました。
・開発フェーズの進展に伴い、組織改編と人材採用強化も行いました
2024年4月1日にはZERO開発フェーズの進展に伴い、組織を大きく改編しました。
改編のポイントは部門間やグループ間の連携強化と、速やかなプロジェクト判断です。また、開発のステージが一つ進む中で、それに対応した試験や検査などの体制をしっかり構築して行く必要があり、より一層品質保証・管理に力をいれるため、品質系3グループ(品質保証、品質試験、品質検査)を独立させました。また、開発部だけではなくコーポレート部、事業開発部、衛星開発部とそれぞれの採用活動の強化も行った結果、メンバー数も116名(2023年1月時点)から約180名(2024年8月時点)まで増員しました。
集合写真は大樹本社と東京支社の2箇所で撮影。
・資金調達、事業開発面でも大きな変化がありました
開発と並行して、経営体制刷新を行い開発、事業開発、コーポレートそれぞれの領域に担当役員を置き、持続可能でスケーラブルな事業展開により一層取り組むことを宣言しました。
資金調達では、SBIグループや株式会社NTTドコモなどを新たな引受先とした第三者割当増資および、りそな銀行からの融資(*りそな銀行は融資枠設定分を含む)により、シリーズEラウンドで31億円の調達を行いました。日本初のロケットと人工衛星の垂直統合型スタートアップを目指し、両事業をさらに加速させていきます。SBIRでは事業継続性についても重要視されるため、自己資金調達能力も審査対象となります。
事業開発では、営業活動で大きな進捗がありました。国内では輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム「JAXA-SMASH 」において優先打上げ事業者に選定され、JAXAと「打上げ輸送サービスの調達に関する基本協定」を締結しました。また、イタリアのベンチャー企業D-Orbit社と打上げサービス提供に関する包括契約も締結するなど、国内外の営業活動が大きく進展しました。
また、顧客(人工衛星事業者)との調整のためのミッションマネジメントグループを新設、ZEROの最新の「Payload User’s Guide」の公開や、海外展示会での顧客獲得などにもさらに力をいれています。
▼SBIRステージゲート審査の通過が、開発・事業の新たな追い風に
ロケットの開発では打上げまでの開発に多くの資金を必要とします。開発段階で国からの支援を得られることにより、開発がより加速するのはもちろんのこと、その分資金を設備投資や人材確保などにも振り向けることが可能となります。また、国の審査を通ったことで、投資家からの信頼や注目度も増し、資金調達にもポジティブな影響が生まれます。
ISTがこのSBIR事業に参加し国が掲げる目標を達成することによって、日本の宇宙産業及び宇宙基本計画に対しても大きく貢献できると考えています。新たな宇宙輸送手段が生まれることにより、日本の宇宙輸送の自立性を高め、高頻度な打ち上げ・低コスト化によって国際競争力を強化できます。また、ZEROの開発で得られた様々な技術知見は、国内宇宙産業全体のサプライチェーンの強化につながり、国内の関係機関・企業との協力、宇宙産業への参画の機会を増やすことにも貢献できると考えています。
開発は決して楽ではなく、これまでも、そしてこれからも薄氷の上を渡るような状況が続くと思います。しかし、その中からでも、いや、その中だからこそ存在する宇宙開発の楽しさ、面白さを、今後もこのファンクラブ通信で適宜追いかけていきますので、みなさん引き続きの応援とご支援をよろしくお願いいたします。
ファンクラブトップページをリニューアルしました
IST公式ファンクラブ「なつのロケット団」のトップページをリニューアルしました!
ファンクラブトップページはこちら。
2016年にファンクラブを開設してから、多くの時間が経ち、その間ロケット開発も進み組織も大きく成長してきました。
ISTがなぜ、ファンクラブを運営するのか、その背景にある思いを改めて綴りましたので、トップページに記載したストーリーを一部ご紹介させてください。
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ファンクラブの名前でもある「なつのロケット団」は、ISTの前身となる有志団体の名前です。自分たちの手で宇宙を目指すために、宇宙機エンジニア、科学ジャーナリスト、SF作家、イラストレーターなどが集まって、2006年に結成しました。
最初はみんなでお金を出し合って部品を買い、都内のメンバーの仕事部屋でロケットエンジンの開発を始めました。たとえ小さなロケットエンジンでも自分たちの手で作ることにこだわり、トライ&エラーを繰り返す中で、徐々に仲間が増えていき、2013年には北海道大樹町で「インターステラテクノロジズ株式会社」として事業を開始しました。
有志団体から株式会社に変わっても、変わらない価値観があります。
それは「宇宙を身近に感じてほしい」という想いです。
その想いの象徴として、このコミュニティの名前を「なつのロケット団」としました。
宇宙開発にはたくさんの苦労やハードルがあるものの、それを上回る喜びがあります。それらをぜひ皆さんにも知っていただき、一緒に宇宙を目指す喜びを共有したいと思っています。
“みんなの力を合わせて宇宙を目指す、「みんなのロケット」”
ISTには、みんなの力を合わせて宇宙を目指す「みんなのロケット」というキーワードがあります。
ロケット開発には莫大な資金が必要で、時間もかかります。ISTは独立系のスタートアップ企業でもあるため、ヒトも、モノも、資金も足りません。そのような中で、私たちがここまで開発を進めてこられたのは、目指す未来に共感して応援してくださる企業・団体、個人の方の存在があったからです。
2017年に観測ロケットMOMOの初号機を打ち上げましたが、この 「MOMO初号機」を打ち上げる1年前の2016年8月に、このファンクラブは産声を上げています。
まだ、知名度も低く資金的にも非常に厳しかった時代に、ファンクラブの皆さんの存在はとても大きな後押しでした。
そして、翌年の「MOMO2号機」の挑戦のあと、2019年に打ち上げた「宇宙品質にシフト MOMO3号機」は、民間単独開発のロケットとしては国内で初めて宇宙空間に到達しました。
ファンクラブに参加していただいた皆さん、さらには打上げの度に行ったクラウドファンディングでご支援いただいた皆さんがいたからこそ成し遂げられたと思っています。MOMOはこれまで3回宇宙に到達し、今後のロケット開発に向けた技術やノウハウを得ることができました。
2021年7月打上げに成功した「ねじのロケット(MOMO7号機)」
その後、インターステラテクノロジズはさらに規模を拡大しています。次世代機となる小型人工衛星打上げロケットZEROの開発が本格化し、工場や拠点を増やし、メンバー数も約180人(2024年9月)を超え、政府や自治体からも支援していただけるようになってきました。
私たちは皆さんと一緒に、ロケット開発の過程で起こるさまざまなことを共有し、喜びをともにしながら、一緒に宇宙を目指したいと考えています。
「なつのロケット団」の一員として、ずっと見守り支えてきたロケットが宇宙に飛び立つとき、そのロケットは他のだれのものでもない、あなたのロケットになっているのです。
この宇宙への旅を一緒に歩みましょう!
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既にご存じの方も多いと思いますが、リニューアルということでファンクラブをどのような思いで運営しているのか、改めて書かせていただきました。
各プランでは、プランごとに異なるデザインのファンクラブ会員カードやオリジナルステッカー、会員限定情報配信などの入会特典があります。
詳しくはぜひ、ファンクラブトップページをご覧ください。
ISTは、これからも宇宙を身近に感じられるよう取り組んでまいります。
皆さん、これからも応援よろしくお願いいたします!
おわりに
今号は、SBIR事業を中心にお届けしました。
次号のファンクラブ通信は2024年10月15日の予定です。
またお会いしましょう!
コメントやSNSでの投稿などぜひご感想もお待ちしています。
ISTがお答えする質問コーナーへの質問・リクエストもお待ちしています!
▼メンバー募集中!
ISTではともに世界と闘うロケットを作るメンバーを募集しています!
私たちは宇宙の総合インフラ会社として、国内はもとより世界の宇宙産業をリードしていきたいと考えています。そのためには、多種多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルの力が必要不可欠です。
開発部からコーポレート部、事業開発部まで幅広い職種のメンバーを募集しています。
私たちと一緒に宇宙を目指しましょう!
少しでも気になる方はぜひ採用サイトや募集職種をご覧ください。
採用サイト
https://www.istellartech.com/careers
募集職種
https://herp.careers/v1/istellartech
10/26(土)名古屋、11/4(月)大阪にて採用イベントを開催!
https://istellar.notion.site/CAREER-SEMINAR-e5253df3177647d28b5271fe0adb7de0