2024/04/11 10:13
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写真:有機農園を営む夫妻を訪ねました。後ろに広がるのは草原ではなくクレソン畑です。

※この記事はワダ農園を応援する気持ちを込めて無料公開とします。お友だちなどに共有していただければ幸いです。

神奈川県の地味めエリアを走る小田急線。その拠点である小田原市へGO!

 横浜、鎌倉、葉山、湘南藤沢。神奈川県にはオシャレ感を漂わせる地域が多い。映画『翔んで埼玉』では東京都の第二の子分の座を争う埼玉県と千葉県の醜い争いをしり目に、神奈川県は不動の第一の子分として優雅に振る舞っていた。
 そんな神奈川県の地味めエリアを走るのが小田急線だ。東京側の起点である新宿を出て代々木上原や下北沢、成城学園前あたりまでは超高級住宅地が続く。しかし、多摩川を超えて神奈川県川崎市に入ったあたりから東京のベッドタウン感が強まり、僕がユニクロ勤務時代に切ない日々を過ごした東京都町田市を抜けて再び神奈川県内に入ると、たいていの東京住民は「行ったことがない、行く用事もない場所」になる。座間、海老名、厚木、伊勢原などだ。
 そして小田急線の本拠地である小田原市に至る。農産物にも海産物にも恵まれた立派な中核都市であり、すぐ西には箱根がある。ここは日帰りするような場所ではなく、ロマンスカーに乗って旅館かホテルに向かうのがふさわしい。
 読者の和田真理子さんが小田原市に住み始めたのは2023年1月のこと。生まれ育った東京都の多摩地域から引っ越して来た理由はズバリ結婚だ。お相手の英朗さんも多摩地域出身だが、30歳のときから18年以上「クレソン一筋」で農業を営んでいる。
 2人の縁をつないだのは、やはり本ウェブマガジンメンバーである村木さんが運営する結婚相談所「リプレ」。村木さんの直感で紹介されて最初から意気投合し、翌年に小田原で同居を始めたという。ちなみに僕はクレソンを含めた香味野菜が全般的に好きなのだ。これは訪問するしかない!

小田急線小田原駅にて。代々木上原乗り換えの千代田線で大手町にも行けちゃいます。ちなみに新幹線を使えば東京駅まで30分ほど。優雅な通勤をしている人も多そうです。

水中で育つクレソン。「誰かが泥を落としてくれて、スーパーに並ぶ野菜があると知りました」

「農家の嫁というと、朝から晩まで働かされてお風呂は最後に入るというイメージでした。でも、夫は代々の農家ではありません。個人事業主の男性と結婚した、という感覚です。夫が懸命に働く姿を見て、誰かが泥を落としてくれてスーパーに並ぶ野菜があるのだと改めて知りました」
 英朗さんの兄夫妻が営む「農家カフェ「Raku」でランチを一緒に食べながら真理子さんがリラックスした表情で話してくれる。Rakuは英朗さんの「ワダ農園」と同じく南足柄市にある。小田原市に隣接する富士フイルムの城下町だ。山からの清涼な水が豊富に得られることで工場用地として選ばれたのだろう。同じ理由で、英朗さんもクレソンを有機農法で育てている。
「元は水田だった土地で、そこの川から水路が引いてあります。クレソンは流れているきれいな水でないとうまく育ちません」
 あぜ道に立ちながら解説してくれる英朗さん。愛知県の秘境である豊根村でのチョウザメの養殖を見学したときの話を思い出す(記事はこちら)。チョウザメは寒冷地がルーツの魚なので冷たい水が欠かせない。しかし、水道代や冷却装置の電気代を払っていたらとても採算に合わないので、標高が高めのところにある川の傍で飼育しているという。クレソンもそれに近いのだろう。都市農業には馴染みにくい作物なのだと思う。

Rakuにて、天ぷらやナムルなど英朗さんが栽培したクレソンをたっぷり使ったランチをいただきました。左は兄嫁さん。東京から夫婦で英朗さんの近所に移住して来たそうです。

化学肥料も農薬も使わずにたくましく育つクレソン。力強い味と香りがした

 就農当初は慣行農法でクレソンを栽培していたと振り返る英朗さん。しかし、次第にクレソンが元気に育たなくなり、水に油が浮くような農薬や化学肥料を使うことに疑問を持ち、「微生物資材」を使用するなどの有機農法に切り替えた。
「即効性はありませんが、時間をかけて徐々に効果が出てきます。今では葉が大きくてたくましいクレソンが育つようになりました。ぜひ食べてみてください」
 畑からちぎり取ったクレソンは見るからに力強く、噛むと濃厚な味と香りがする。旨い…! 新鮮さを差っ引いても、人生史上最高のクレソンである。これを一度味わうと、市販のクレソンが物足りなく感じてしまうだろう。
「ワサビの代わりにも使えますし、柑橘類との相性もいいんです。カルパッチョに使うのはどうでしょう」
 魚料理が好きな僕にすかさず魅力的な提案をしてくれるのは真理子さん。東京では食品会社で働いていた経験もあり、現在はワダ農園の「販売促進・企画」担当という肩書きがある。生産担当はもちろん英朗さんだ。
「繁忙期はクリスマス需要がある年末ですが、卸会社に年間を通して出荷できています。道の駅にも出品できますが、置かせてもらうだけなので売り切れそうな分だけの出荷です」
 英朗さんはRakuも含めた飲食店にもクレソンを届けている。消費者への直接販売も模索していた頃に飲食好きの真理子さんと結ばれた。前世で家族だったのではないかと思うほど、補完し合えるお似合いの夫婦だ。
「喧嘩することもありますよ。夫は自宅の庭でタープを張って焚火をするのが趣味なので、頭に来たら庭に追い出しています」
 と笑う真理子さん。伸び伸びと過ごしていることが伝わってくる。ほどよく田舎である小田原は、彼女が生まれ育った頃の多摩地域に似ているのかもしれない。

真理子さんが「足柄ワイルドクレソン」と命名したワダ農園のクレソン。添え物などではなく、これをメインにむしゃむしゃ食べたくなります。クレソン鍋とかいいかも!

消費者ではなく生産者が主人公になることで豊かさの定義が変わる気がする

 夜は小田原駅近くの居酒屋に移動し、小田原港で揚がる魚を食べながら和田夫婦とあれこれ語り合った。僕がコンポスト活用を通して微生物に興味を持った話をすると、英朗さんは身を乗り出すようにして有機農業の喜びと苦労を語ってくれた。酔いも手伝って異様なほどの笑顔である。独特の愛嬌を発散し始め、料理を運んできた居酒屋の女将さんから「なんか好き」と告白されていた。すごい人だな……。
 1次産業の大変さに関しては、僕も近所の漁師の船に乗せてもらったりしながら実感している。英朗さんのように効率よりも食の安全性や美味しさを追求している生産者は、そのプロセスを消費者に伝えて妥当な価格で販売する必要がある。これからも真理子さんと二人三脚で努力をしていくことだろう。
 ワダ農園でクレソンをつまみ食いしながら僕は別のことも感じた。自然相手の仕事で持続可能な生産形態であろうとすると、有能な人が頑張ったとしても大儲けはできないのではないだろうか。生態系の維持と資本主義経済はそもそも馴染みが良くないのだと思う。
 だからこそ、「豊かさ」の部分は市場経済や政治・行政などから少し離れたところで享受すべきなのかもしれない。すなわち、物々交換的な関係である。
 例えば、自慢の生産物を持ち寄った食事会などはどうだろうか。原則として自分が作ったものだけを持ち込めることにして、どうしても用意できない人はお酒などの加工品もしくはお金を出す。主人公は生産者であり、消費するだけの人はお金持ちでも威張れない。全国各地で開かれるそんな食事会の料理が平均的な飲食店の味と楽しさを凌駕するようになったとき、豊かさの定義が変わっている気がする。好奇心と誠実さの塊みたいな和田夫婦と飲み交わしながら、こんな夢を追い求めたくなった。(了)

ビニールハウスのほうは小田急線の近くにあります。この風景、子どもの頃に過ごした西武新宿線沿線みたいです。

小田原駅前の「居酒屋金時」にて。酒好きおしゃべりおじさん2人に囲まれた真理子さん、お疲れさまでした!

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