2023/12/14 08:39
いいねいいね13
いいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいね
ワクワクワクワク0
おめでとおめでと0

写真:カカオの風味を感じられる「ローチョコレート」の販売を始めた女性の話です。(小倉さん提供)

※この記事は小倉さんの取り組みを応援する気持ちを込めて無料公開とします。お友だちなどに共有していただければ幸いです。

上京、娘の巣立ち、自らのお菓子ブランドのスタート

<勢いで自分のブランドを立ち上げたら驚くほどのスピードで物事が広がり、今まででは考えられなかった人脈ができて、ものすごい強みになっているということをお伝えしたかったのであります。>

 興奮気味のメールを送ってくれたのは、以前に取材協力をしてもらったことがあるウェブマガジンメンバーの小倉一恵さん。静岡県出身で、2020年1月に上京し、大学に通っていた娘さんと一緒にJR中央線の国立駅近くで住み始めた。娘さんが社会人になって独立後、小倉さんは同じ国立エリアの一人暮らし用の部屋に引っ越した。そして、自ら立ち上げたローチョコレートブランド「Ichie」の製造・販売・宣伝に勤しんでいるという。なかなかの急展開なので興奮するのも無理はない。
 小倉さんに試食させてもらうまで、僕は「ローチョコレート」という食品を知らなかった。小倉さんによれば、48℃未満で調理することで、栄養素や酵素を壊さずに摂取できるというローフードの一種らしい。体にいいのかどうかは僕にはわからないけれど、カカオ豆の味が普通のチョコレートよりも感じやすいと思った。でも、それはIchieのチョコが甘さをかなり控えている影響とも言える。
「私自身が甘すぎるお菓子が苦手だからです。ほとんどのローチョコレートは上白糖を使っていません。Ichieもオーガニックのメープルシロップを使っています。ドライフルーツなどの素材の甘さも生かしているつもりです」

こちらが小倉さん。国立コミュニティつながりで友だちになったフォトグラファーAyako Takedaさんに一橋大学の構内で撮影してもらったそうです。(小倉さん提供)

ローチョコレートは競合しにくい。我ながらあざとい理由です(笑)

 このように紹介すると小倉さんは自然食系の人物のように見えるが、実際はそうでもない。ヨガをやったり発酵食品を食べたりすると体調が安定すると感じている程度で、ローチョコレートのことを知ったのは2022年6月だという。はっきり言って僕と同じようなものだ。
「若い頃から、お菓子は食べることよりも作って誰かにあげることのほうが好きでした。でも、今さらフィナンシェを作っても飽和状態でしょう。高くても1個300円。チョコならばもっと単価を高くできるし、ローチョコレートは知っている人すら少ないので競合しにくいと思いました。我ながらあざとい理由です(笑)」
 自分自身がローフード信奉者でもなくチョコレート好きなわけでもない。マーケティング思考の産物がIchieなのだ。悪びれずに率直に話してくれるところが僕好みである。小倉さんはお菓子作りとは縁遠かった20代以降を振り返る。
「短大は食物科でした。そのときに栄養士の資格を取りましたが、それを生かした仕事に就く気はさらさらありませんでしたね」
 ときはバブル経済期。小倉さんは証券会社で3年半働いて辞め、ヨーロッパを放浪するなどの気ままな20代を過ごした。そして、結婚。夫の転勤について横浜で暮らし、興味の赴くままに編集・ライター学校に通い、フリーランスのライターとして活動も始める。
「そのうち夫と不仲になり、幼い娘を連れて静岡に戻りました。30代半ばの頃です」
 シングルマザーとなった小倉さんは地元で機械メーカーの広報の仕事を見つける。正社員として15年以上勤めたが、52歳にしてまさかのリストラに遭った。

イチゴの赤が良く映える板チョコ。小倉さんが大切にしている言葉「一期一会」と自らの名前(一恵)がIchieの由来です。(小倉さん提供)

リストラで一変した人生。今となっては地元に居続けている人生は想像できません

「すごくショックでしたが、あれがなかったら国立に来て自分のブランドを立ち上げることもなかったはずです。今となっては、あのまま静岡に居続けている人生は想像できません」
 大学生となっていた娘と一緒に住み始めた小倉さん。何はともあれ仕事を見つけなければならない。半官半民の団体で5年任期の仕事を見つけ、モノ系雑誌での執筆も続けている。
「コソコソと副業したくないので、ライター仕事は申請して理事会で認めてもらっています。今年の春にローチョコレートも始めることも上司に伝えたところ、『店を構えて何十万円も売り上げるわけではないでしょ。趣味の延長なら僕のレベルでOKを出すよ』と受け止めてくれました」
 小倉さんはリアル店舗の開店どころかネット販売も今のところ始められていない。ただし、商品を隙なく作って魅力的に仕上げることには本気で取り組んでいる。
 隙なく、の部分は副業申請だけではない。自宅キッチンではなく、保健所の許可を得ているシェアキッチンを使うことで同業者とのつながりも深めている。
 お菓子はプレゼント需要も多い。味と同じぐらい見た目も重要だ。Ichieは色とりどりのドライフルーツをふんだんに加えた板チョコが看板商品である。
「一目で『わ~っ、かわいい!』と言ってもらえることを目指しています」
 パッケージデザインはフリーランサーの公募サイト「ランサーズ」を使って探した。30件ほどの応募の中からスペイン在住の日本人デザイナーと出会えた。国立という街のイメージも活用するために旧駅舎をイラストに書き起こしてもらい、パッケージに採用した。

Ichieのロゴは小倉さんの娘さんが作ってくれました。パッケージ印刷は、デザイナーが紹介してくれた札幌市の印刷会社に依頼したそうです。いろんなつながりの結集ですね!(小倉さん提供)

小さくて開放的なコミュニティ。国立という街の仲間に支えられています

 以前からパンやお菓子の製造販売にチャレンジしたかったという小倉さん。今年になって踏み切れたのは一人娘が巣立ったことだけが理由ではない。進学で先に住んでいた娘以上に国立という街に馴染み、仲間たちに背中を押してもらったのだ。
「静岡市に比べるとこじんまりしたコミュニティで、なおかつ排他的ではありません。私のように外からこの街に住むようになった人が多いからだと思います。ガツガツした雰囲気の人も少なく、ゆるくつながって協力し合いやすい街です」
 つながりのハブの1つとなっているのが、小倉さんの紹介で取材協力をしてもらった合同会社三画舎(記事はこちら)だ。2022年の秋、小倉さんがチョコレート教室に集中的に通ってローチョコレートの基本を学んでいた頃、三画舎のメンバーが関わった「みんなのコンビニ」という店舗が生まれようとしていた。国立ならではの商品を並べるシェア店舗である
「教室の課題でローチョコをたくさん試作していたので、友人たちに配っていたところ、みんなのコンビニのプレイベントへの出品に誘ってもらったんです。コーヒー豆を売る人が多くて、私のローチョコとセットで買ってもらったりしました」
 みんなのコンビニに加えて、国立駅前にある旧国立駅舎「まち案内所」でもお土産品として販売が決定(11月から3月までの冬季限定)。ローチョコレートという商品の珍しさに加え、国立をブランドイメージにしたことが功を奏した。

旧国立駅舎「まち案内所」のIchieコーナー。国立に縁がある人やお店は、手土産やノベルティとしても使えそうです。(小倉さん提供)

人生経験を詰め込んだようなブランド。生産体制と商品の完成度は当面問題なし

 広報やライターで磨いたPRの力を含め、小倉さんのこれまでの人生経験をすべて詰め込んだようなブランドIchie。その商売を楽しく応援するのが我が小商い部の役割なので、Ichieの課題について少し考えてみる。
 まず生産体制に関しては現段階では問題なさそうだ。小倉さんの自宅から自転車で15分で行けるシェアキッチン「おへそキッチン」は「月10時間コース」で借りている。月2回、5時間ペースで使用しており、小規模のイベント出店用ならば1回で生産可能。包装などは自宅でやればいい。
 肝心の商品も完成度が高いと思う。小倉さん自身が「すごくチョコレート好きなわけではない」だけに、客の目線で作られているのだ。この見た目と味ならば、国立土産として女性にさりげなく渡したら大いに喜ばれる気がする。

こちらがボンボンショコラ。エレガントな大人の雰囲気ですね。国立在住の友人にもすすめてみます!(小倉さん提供)

課題は販売ルートの確保。委託販売ではなく買取を基本とすべき?

 課題は販売ルートの確保らしい。現在は、上記2カ所に加えて、近隣のマルシェイベントなどに出店しているが、交通費などを考えると遠方では割が合わない。
「山口県周南市でBROWN WEEKなる珈琲とチョコレートのイベントがあるとのことで(11月12~18日で開催済み)知人から出店の誘いを受けました。時間的&距離的&交通費的に厳しいのでお断りしたところ、現地の方が買い取って売ってくれることに。私抜きでローチョコレートだけが山口県に上陸しました」
 委託販売は10月の第1回小商い部フリマ(記事はこちら)でも試してみた。販売を任せられるのはメリットだけど、返品の手間と高騰している運送代を考えると無駄が多い。宣伝にはなっても「商売」にはならない。
 BROWN WEEKで小倉さんがしてもらったように、買取制のほうが現実的だと思う。それには販売側がリスクを負って売れると見込んだ分だけを買い取る目利き力が必要となる。
 小倉さんのローチョコレートを買いたい場合はIchieのインスタグラムからメッセージを送信してほしい。まとめて買えば卸売り価格も提示してくれると思う。もちろん、僕が間に入って小倉さんを紹介することもできる。Ichieがどんどん売れ始め、小倉さんが勤め先の理事会に副業申請をし直す日が来るといいなと思う。(了)

コメント

このアクティビティは気に入りましたか?