2020/03/02 11:11
両親と不仲で家を飛び出した高校時代
パブのボーイとして働き始めた

 中学校時代の同級生である石戸谷篤志くん(43歳)が彫師(刺青師)として開業している、と聞いたのは10年くらい前だ。そのさらに20年前、筆者たちが通っていたのは、埼玉県との県境にある東京都東村山市の公立中学校。石戸谷くんと筆者は同じバレーボール部に所属していた。彼はエース選手で筆者は補欠という差はあるが、仲は悪くなかったと思う。しかし、高校に進学してからはお互いに顔を合わせることはなかった。
 筆者は大学生の後半ぐらいから急に「幹事体質」になった。クラス会をはじめ、非公式の様々な集まりや飲み会を思いついて実行するのが趣味になったのだ。結婚して愛知県に引っ越してからも、中学校時代に同じ学年だった人たちとのミニ同期会を毎年主催している。石戸谷くんはそこに顔を出してくれた。職種は違うけれど、個人事業主同士で話が合う気がしたのを覚えている。
 石戸谷くんが彫師名「彫進」として開業しているのは埼玉県川越市の川越駅前にあるマンションの一室。川越駅は東武東上線とJR川越線が乗り入れている大きな駅であり、駅前には繁華街が広がる。少し歩くと西武新宿線の本川越駅にも行ける好立地だ。
「うちは23歳以下の客が多いからね。免許がなくても電車で来られる場所だと便利だろ? 県の条例で(刺青を)彫れるのは18歳以上と決まっているんだ。ヤンチャな子は成人式前に彫りたがるからね」
 冷静な口調で立地の重要性を語る石戸谷くん。彫師を志したのは28歳のときで、それまでの約10年間はホストやスキーインストラクター、解体業の職人などを経験しながら「天職」を模索する日々だった。
「(埼玉県狭山市の)入曽にあったパブでボーイをしていたのは高校生の頃だよ。あの頃は親と仲が悪くて、元暴走族の彼女がうちに来るたびに嫌な顔をされていた。高校受験前の妹に迷惑がかかるからオレはいないほうがいいと思って、家を出て彼女と一緒に住み始めた。家賃を稼がなくちゃいけないのでパブで働き始めたんだ」
 ここで言う「パブ」とは現在のキャバクラに近い業態である。高校生が働いていいのか疑問だが、90年代は良くも悪くもおおらかな時代だったのだ。

機械彫りのマシーンを持ってポーズする彫師(刺青師)の石戸谷篤志くん。筆者の同級生です

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