
2021年も今日で終わりですね。いかがお過ごしでしょうか。
改めて、ぼくの2021年を振り返ると、
今年は漫画が描けなかった1年でした。
「漫画家」と謳っているのに、漫画が描けない。
これほど心苦しいことはありません。
自分が本当に描きたかった漫画、長編の物語で、人の心に届くような、そんな漫画が、
思うように描けない1年でした。とても苦しい1年でした。
今まで描いてきた漫画のようにはいかない
SNSで漫画活動をするようになってからというもの、いろんな漫画を描いてきました。
代表作、『仮想通貨体験記』もその一つ。
仮想通貨で300万円を損した実体験をもとに、仮想通貨に翻弄されるキャラクターたちをゆるく、チカラを抜いて描きました。
同作品はKindleやLINEマンガなど、たくさんの電子書籍配信サイトで配信されていて、『ピッコマ』という配信サイトでは、30万を超えるいいねをいただいています。
チカラを抜いて描いた漫画が、結果的にいちばん読まれる漫画になりました。
Twitterでバズることを意識して描いた、『かいちの幸せの見つけ方』
ぼくの経験から思うことを描いた、4ページの自己啓発系エッセイ漫画シリーズです。
「漫画で1万リツイートを獲得する」と宣言し、4ページの漫画を40本ほど描きました。
いちばん拡散された漫画は1.3万リツイートを獲得し、Yahoo!ニュースにまで掲載。宣言したことを達成した上に、大手メディアにも取り上げてもらえる結果となりました。
その後は、SNSの評価や数字に振り回されて漫画を描いている自分に氣がつき、好き勝手に漫画を描いてやりました。
『短編創作100本チャレンジ』と題して、短いお話を100本……描くつもりだったのですが、こちらは14本しか描いてません(笑)。
こちらは数をたくさん描くことを目標にしていたので、絵にはほとんど力を入れず、ハイペースで作品を投稿していきました。
描きたいことだけを詰め込んで描き続けた結果、パトロンが現れ、制作資金を提供してくださる運びとなりました。
そんな漫画活動を経て、ぼくが本当にやりたかった長編漫画の制作へ足を踏み入れたのが、去年の暮れのこと。
今年1年、長編漫画の制作に取り組みましたが、
これが全然描けなかった。
1年経っても、まともな作品を公開することができませんでした。
長編漫画を作るのは、いままで描いてきたような漫画を制作するのとは勝手が大きく違いました。
いままで描いてきた漫画は、言うなればSNSウケしやすい漫画でした。
伝えたいことをわかりやすく簡潔に伝えられれば、それなりに評価される漫画。
しかし、今のぼくが表現していきたいものは、多くの人にウケなくても、誰かの心に残る漫画でした。
わかりやすくはないかもしれないけど、しっかり読み取ってくれる人の心には深く刺さる、そんな漫画。
わかりやすく簡潔に描く漫画とは、制作の勝手が大きく違いました。
伝えたいことを伝えるために、内容をしっかりと練り込まなければいけない。
続きを読んでもらうために、「面白い」と感じてもらえる要素を組み込まなきゃいけない。
これが、ぼくにはとっても難しかったんです。
扱う情報が増えれば増えるほど、物語をまとめるのが難しくなっていきました。
次第に、自分の描きたいものも、よくわからなくなっていきました。
なんのために漫画を描いているのかすらも、よくわからなくなっていきました。
全くと言っていいほど、思うように作品をつくることができませんでした。
でも、「できないから」といって諦めるわけにもいきませんでした。それがぼくの描きたい漫画だったから。
それが故に今年は、理想と現実のギャップにひたすら苦しむ1年となりました。
「才能ない」
そう痛感する毎日でした。
足りないものを補うかのような1年
足りないものを補うかのように、今年はいろんな経験をさせていただきました。
3月)
人生初となるクラウドファンディングに挑戦させていただきました。5月に開催した個展、『毎日女子展』の開催費用を集めるため、30日間の資金調達に挑戦しました。
始める前は、資金がちゃんと集まるか不安でいっぱいでしたが、いざ始まると初日から最終日までご支援が途切れることなく、毎日毎日、感謝の氣持ちで胸がいっぱいでした。
蓋を開けてみれば167名の方から716,000円ものご支援をいただくことができました。
誰かの夢を応援してくださる人が、世の中にはこんなにたくさんいるのかと思うほど、たくさんの優しさをいただきました。
人生でいちばん、人の温かさに触れた30日間。他には変えがたい貴重な経験となりました。
5月)
人生初となる個展、『毎日女子展』を開催しました。たくさんの方の協力のおかげで、無事に開催することができました。
7日間の開催で250人以上の方が会場に訪れ、ぼくの作品を見てくださいました。たくさんの方から、お祝いのお言葉をいただきました。これもまた、感謝の絶えない7日間でした。
366日の毎日投稿を達成した2020年12月31日は、継続達成の実感があまり湧きませんでしたが、個展初日の2021年5月3日、壁一面に並べられた作品たちを見てようやく、366日の継続達成を実感することができました。
ファンの方と直にお会いして作品の感想をいただいたり、作品やグッズを購入してくださる様子を目の当たりにしたりすることで、
初めて、自分の作品に価値があることを実感することができました。
個展を終えてようやく、本当の意味で、自分に自信を持つことができました。それまで持ち合わせていた根拠のない自信が、根拠のある自信へと変化していきました。
作家として、ひとりの人間として、大きく成長した7日間でした。
6月-8月)
たくさんのアートに触れました。
個展を経験したことで、アーティストという生き物に興味を持ち始めました。アーティストがどんなことをしているのが、知りたくなりました。
バンクシー、岡本太郎、葛飾北斎など、
展示会が開催されている会場に赴き、彼らの作品に触れてきました。
感じたのは、アーティストとしての生き様でした。
打算を一切感じない本氣の表現に、ただただ圧倒されました。
これまで自分が残してきた、ウケを狙った作品や、わかりやすい発信が、ものすごくちっぽけなもののように感じました。
彼らのような、本物のアーティストになりたいと、強く思うようになりました。
9月)
旧東海道、約514kmを徒歩で制覇しました。東京の日本橋から京都の三条大橋まで、歩いて行ってきました。
お友達の武士 佐野翔平が「旧東海道を歩きたい」と言ったので、面白そうだからご一緒させていただきました。
江戸時代の人たちが歩いて移動していた道と同じ道を辿って、東京から京都まで行ってきました。
道中、たくさんの人に出会いました。
佐野翔平のファンの方から、道中初めて会った人まで、たくさんの方がぼくらの旅を応援してくださいました。
「ここがおれの地元だから」と、誇らしげに道案内してくれた通りすがりのおじさん。
「おれらはもう老いてくだけだから」と言って、差し入れをたくさんくれた老夫婦。
「おれも山登るから」と、飲み物を分けてくれた工事現場のお兄さん。
企画者でも主役でもないぼくにまで、優しい言葉をかけてくださる、佐野翔平の応援者の方々、
漫画活動と関係ないのに、現地に駆けつけてまでぼくのことを応援してくださったファンの方。
こんなに優しい世界がこの世の中にあるのかと思うほど、たくさんたくさん人の温かさに触れた23日間でした。
11月)
友人の点描画家、hiromiさんの個展をお手伝いさせていただきました。人生でいちばん温かい氣持ちになった7日間でした。
hiromiさんがこだわり抜いて作った世界観と、それに感動する人々、何より、点描画家hiromiさんの心の温かさを、いちばん近くで見ていました。
温かさが滲み出る作品と、温かくファンの方に接するhiromiさん、そんな温かいhiromiさんに引き寄せられて訪れる温かいファンの方。作品から受ける感情と、会話の言葉の一つ一つが、ぼくの心に響いてきました。
そんな温かい空間では、いるだけで不思議と涙が込み上げてきて、堪えきれずに号泣した日もありました。
本当に素晴らしいものを見せていただきました。
今年1年かけて探していた、なりたいアーティスト像を、hiromiさんに垣間見ました。
自分もこんなふうに、人の心を動かせるようなアーティストになろうと、強く心に誓いました。
12月)
たくさんの経験を経て、漫画制作に戻ってきました。
経験を積むことで見えてきた自分
相変わらず、描けない日々は続いています。
でもようやく、自分の表現したいことが見えてきました。
苦しかった日々が、ほんの少し和らいできました。
今年1年、たくさんの経験を経て、自分をより知ることができました。
自分はどんなものが好きなのか、どんなことに感動するのか、どんなことに幸せを感じ、どんなことで涙するのか、どんな人に寄り添いたいのか、誰の味方でありたいのか、どんな人が好きなのか、
漫画で何をしたいのか、人生をかけてどんなことを表現したいのか、
自問自答を繰り返す中で、これまで見てきたもの、経験してきたことと、自分自身を照らし合わせ、感情の動いた方へ、意識を向けていきました。
自分のやりたいことがだんだんと明確になってきました。
今年1年、いろんな経験を積むことで、自分を知ることができました。
これからは違うのかと言われれば、まだ確証は持てませんが、確実に変化したことは自覚しています。
今のぼくが本当にやりたいこと、表現したいもの。
それらを迷わず、制作中の作品に込めようと思います。
わかりやすさもウケ狙いもいらない。ただ、表現したいことをそのまま、作品に落とし込もうと思ってます。
来年こそは、作品を公開していきます。
この描けない壁は、来年必ず乗り越えます。もう少し待っててください。
※こちらの記事は全体公開なので、メッセージを二つ用意しました。
ファンクラブメンバーさんへ。
作品をなかなか公開できない中でも、こうしてファンクラブに居続けてくださって応援していただけること、本当に感謝しています。いつも記事を読んでくださったり、温かいコメントをくださったり。ぼくの創作活動を見守ってくださって、本当に本当にありがとうございます。みなさんの支えがあるから、自分から逃げずに創作活動に打ち込むことができています。必ず結果で返していくので、もう少し待っててください。
ファンクラブメンバー以外の、応援してくださっている方へ。
いつも応援してくださって、本当にありがとうございます。SNSでの温かいコメントやダイレクトメッセージ、直接お会いしたときにかけてくださる温かいお言葉の数々、本当に感謝しております。作品がなかなか公開できず、心苦しい1年でしたが、そうした中でも離れずに応援してくださること、大変ありがたく思います。来年こそは作品を公開していくので、楽しみに待っていてください。
以前から応援してくださっている方も、今年初めてぼくのことを知ってくださった方も、
今年は本当に本当にお世話になりました。
来年もどうか、漫画家かいちをよろしくお願いいたします。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
それでは、良い年末年始をお過ごしください。