
溢れる涙が止まらない。
これほどまでに心を動かされた体験は、人生で初めてでした。
とても素敵なアートに触れてきました。
いったいどうやったら、あんな素敵なアートを創り出すことができるのか。
アートはどこから生まれるのか
11月20日〜11月26日まで、『しんこきゅう展』という個展のスタッフをさせていただいておりました。
『しんこきゅう展』とは、点描画家hiromiさんの、人生初となる個展です。
「絵を描いているときだけは、過食の辛い衝動を忘れることができました。当時の私にとって、絵を描くことが唯一の精神安定剤だったんです」
そう語るのは、点描画家のhiromiさん。
hiromiさんは20代の頃に摂食障害になってしまい、約5年もの間、過食嘔吐に苦しむ日々を過ごしたそうです。
hiromiさんは、摂食障害の辛い日々を過ごす中で、現実と向き合わなければならないことに氣付き、少しずつ病気を克服していきました。
『しんこきゅう展』は、そんなhiromiさんが摂食障害の時期に描いた絵を中心に創られた、人生初となる個展です。
そんな点描画家hiromiさんの初の個展、『しんこきゅう展』にスタッフとして1週間、在廊させていただいたわけですが、
本当に素晴らしいものを魅せられました。
毎日毎日、溢れそうになる涙を必死に堪えていました。
なぜこんなにも心動かされるのか、期間中に考えていましたが、
感じたことが多すぎてうまく整理できていませんでした。
いま改めて、ぼくの身に何が起こっていたのかを振り返ってみようと思います。
ぼくが『しんこきゅう展』で何を見て、どう感じていたのかを綴っていきます。
アートはどこから生まれるのか
まず驚いたのは、hiromiさんの細部へのこだわりでした。
今回の個展には、前日の搬入からお手伝いさせていただきました。
hiromiさんが用意した作品や、個展に飾るインテリアや小物等を、hiromiさんのイメージ通りに画廊に並べ飾りました。
hiromiさんが用意したもの一つ一つに、〝こだわり〟が見えました。
飾った作品は全部で14点。作品ごとに額縁が違ったのですが、作品のイメージに合う額縁で揃えられていました。
20代の頃に描いた作品は、黒縁にマットを貼り付けて。個展開催を決めてから新しく描いた作品は、同じ黒縁でも透明感なアクリルケースに入れて、これまでの作品とは違う雰囲氣を出していました。
ポストカードを立てかけるホルダーは、金色の小さいインテリアを用意していました。また、芳名帳や感想ノートに使うペンを立てかけるペン立ても、金色の小さいマグカップ型のインテリアを。
この金色の小さいインテリアたちが、画廊に常設されている茶色い木のテーブルと絶妙にマッチしていたんです。
ポストカードの在庫を置く棚には、木目調のウォールシェルフを用意していました。ドイツ製のものだそうで、壁に取り付けると画廊の雰囲氣が一氣に和らぎました。
木目調のウォールシェルフが、画廊の雰囲気にぴったりと合い、かつ、hiromiさんがイメージしている世界観がより鮮明になるインテリアとなりました。
果てには、グッズや備品を入れて運んできたトランクまでも、ドイツ製のお洒落なものを持参していました。
荷物を運ぶためのものだから、極論を言うと、ダンボールでも良さそうなもの。しかしそこにはやっぱり、hiromiさんのこだわりがありました。
「基本的には裏にしまうけど、会場に置いてあっても悪く見えないように」
そう言われたときは衝撃が走りました。
見えるところはもちろん、見えないところまでもとことんこだわる。
hiromiさんが普段から、いかにこだわりを持って生活しているからが手に取るように伝わってきました。
普段のありのままのhiromiさんを、今回の個展に持ってきた。
ただそれだけのことなんだと思います。
このことがベースとなって、心動かされる体験が創られていたと実感するのは、個展が実際に始まってからの話です。
アートはどこから生まれるのか
〝人は鏡〟とは、よく言ったものだなと思います。
いざ個展が始まると、たくさんの方が画廊に足を運んでくださいました。
画廊に訪れる方がみなさん、心温かい方だなと感じました。
ちょっと緊張されている方、元氣いっぱいの方、落ち着いた雰囲氣の方、それぞれでしたが、訪れてくださった方はみなさん、物腰の柔らかい方ばかりでした。
hiromiさんの個展開催を祝い、作品に浸り、hiromiさんの想いを聴き、優しい言葉で会話を繰り返し、とても幸せそうな表情をされる。
そんな温かいファンの方を引き寄せているのが、他でもないhiromiさんご自身なのだと実感するのに、時間はかかりませんでした。
画廊でのhiromiさんの立ち振る舞いを見ていると、hiromiさんの心の温かさが手に取るように伝わってきます。
hiromiさんは、画廊に来てくださった方ひとりひとりに対して、真摯に向き合っていました。
足を運んでくれたことにまず感謝を延べ、じっくりお話をし、作品への想いを語り、最後にまた感謝を延べ、外へ出て笑顔で見送る。
誰1人として氣を抜くことなく、同じ態度で、同じ接し方で、真摯に向き合う姿にぼくは、終始心を動かされていました。
そんな、誰よりも人に温かいhiromiさんと、hiromiさんに惹き寄せられた、心温かいファンの方とのやりとりが、温かく感じないはずがありません。
言葉が飛び交うたびに、ぼくの心は動かされました。
画廊にいられないほど胸いっぱいになる瞬間が、何度も何度もありました。
アートはどこから生まれるのか
作品から受け取ったのは、hiromiさんの繊細な心でした。
点描を駆使して、綿密に描き込まれた作品たち。どの作品からもチカラを感じました。
一つ一つ、訴えてくる感情は異なりますが、ぼくがどの作品からも受けとったものが、hiromiさんの〝繊細な心〟でした。
繊細に表現された作品の中から、ぼくの目には、どこか悲しげな、寂しげな感情を訴えてくる作品が目立ちました。
「繋がりたいのに繋がれない」
「仲良くしたいのに仲良くなれない」
そんな感情を伝えてくる作品たちはどれも、20代の頃の、苦しんだ時期の作品です。
当時の自分にもがき苦しんだ様子、外の世界に求めていたものが、繊細に表現されていました。
それほどまでにこの世界に苦しんで、この世界に求めていたのかと思うと、その繊細な心に氣づかないわけにもいきません。誰よりも繊細な心を持っているからこそ、あれほど綿密で感情を揺さぶる表現ができたのだなと感じました。
以降の作品では、同じく綿密に描かれたものでも、だんだんと明るく、優しさに溢れるものへと変化していきます。
その変化にもまた、感情を動かされてしまうのです。
まるで、hiromiさんの人生そのものを見せられているようで、
辛く苦しく、心寂しい時期を経て、今の心温かいhiromiさんがいるのだと、
誰よりも繊細な心持ちで、苦しみを味わってきたからこそ、今の、どこまでも人に温かくできるhiromiさんがいるのだなと、
これほどのものを魅せられたら、そんなことを考えないわけにはいきませんでした。
ぼくの胸は、常に限界を迎えていました。
アートはどこから生まれるのか
全てが温かく感じてしまう。
これだけ心動かされる体験を、人生のうちで何度味わえるでしょうか。
作品が伝えてくるhiromiさんの感情、hiromiさんが創り上げた空間の雰囲氣、hiromiさんに惹き寄せられた温かいファンの方、ファンの方と真摯に向き合うhiromiさん、hiromiさんとファンの方の会話言葉ひとつひとつ、
とにかく全てが温かく感じてしまって、毎日胸がいっぱいでした。
個展4日目は、涙を堪えきることができず、バックヤードで号泣。
その後も何度か涙腺が限界を迎え、果てにはインスタグラムのライブ配信中にまで涙を流してしまうほど。個展が終わった後の打ち上げでも泣きました(どんだけ泣くねん)。
これほどまでに心を動かされたのは、人生で初めてです。
まさにアートでした。
とても素敵な、心を動かされる芸術を、誰よりも近くで体感していました。
なぜこれほどまでに心を動かされるのか、ずっと考えていました。
考えても考えてもわからなかったのですが、このアートがどこから生まれたのかだけは、感じ取ることができました。
アートは、人から生まれるのだと思います。
作品を描いたのはもちろんhiromiさん、個展の画廊を選んだのもhiromiさん、個展のために全てを用意したのも、作品を飾ったのも、来てくださる方を呼んだのも、hiromiさん。
hiromiさんの人間性が、あの空間の、あの温かさを創っていました。
『しんこきゅう展』という個展がまさに、hiromiさんの創り出したアートでした。
アートは人から生まれる
見てきたこと、経験したこと、残したもの、
全てが目の前の表現につながっていて、
打算なんて必要なく、ただありのままに、
そのときの自分を形づくることで、
アートは生まれるのだと、
そうして生まれた混じり氣のないアートが、人の心を動かすのだと、
そんなことを思いました。
ぼくにもきっとできる。
あんなふうに、誰かの心を思い切り動かすような、そんなアートを生み出すことが、きっとできる。
『しんこきゅう展』を終えてから、無性にそう思うようになりました。
『しんこきゅう展』は、自分が体験した中で最も心動かされたアートです。
自分の中での最高を体験したことで、自分の立ち位置がくっきりしました。
自分が目指すところ、表現したいことも、今まで以上に鮮明に見えてきました。
自分が今までやってきたことがちっぽけに思えるのと同時に、自分の可能性について、もっと信じれるようになりました。
まだまだ上がある。もっともっと力強く表現できる。
頂点を知ることで、道筋が見えました。
『しんこきゅう展』に倣って、もっともっと自分らしく、ありのままで、心の赴くままに表現していこうと思いました。
胸のうちにある芸術を爆発させます。
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最後まで読んでくださってありがとうございました。
8日間、点描画家hiromiさんの『しんこきゅう展』に携わって感じたことを、自分なりにまとめました。
この記事は一般公開にしているので、最後に、いつも応援してくださってるファンクラブ会員の方へと、『しんこきゅう展』を応援してくださった方へ、メッセージをお届けして締めくくろうと思います。
【いつも応援してくださってるファンクラブ会員の方へ】
先週は記事を投稿できずに、本当に申し訳ありません。ご覧の通り、1週間とても心騒がしい体験をしておりました。
ぼくの人生の分岐点になると思えるほど、とても貴重な体験をさせていただきました(分岐点になるかどうかは、しばらく過ごしてみないとわかりません)。
自分が変化しているのを感じます。
以前にも増して心優しく、また、表現に対する想いが強くなっているのを感じます。
どう変わったかは、今度の作品に現れてくるかと思います。
相変わらず漫画が描けておらず、本当に申し訳ありません。もうしばらくお待ちください。
素晴らしい体験をさせてもらった分、必ずいいものをお届けします。
【『しんこきゅう展』を応援してくださった方へ】
『しんこきゅう展』で8日間、スタッフをさせていただきました、漫画家のかいちです。
この度は、点描画家hiromiの『しんこきゅう展』を応援していただき、本当にありがとうございました。
みなさんが応援してくださったおかげで、ぼくは人生の分岐点と思えるような、貴重な体験をさせていただくことができました。
記事にも書きましたが、こんなに心動かされた体験は初めてです。
この経験を通して、作家として、人として、大きく成長することができたと感じています。
貴重な体験を与えてくださり、本当に本当にありがとうございました。
これからも、点描画家hiromiをよろしくお願いいたします。
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最後まで読んでくださって本当に本当に本当にありがとうございました!!
今年はもう大きな企画は控えてないので、漫画描きます!!
それではまた!!!
かいち