
12月県議会において1年間塩漬けにされていた「沖縄県動物の愛護及び管理に関する条例」が全会一致で通ったと唯一動物愛護の旗を掲げて頑張っていられる比嘉瑞己県議より連絡があった。議員からは1年間の中で当局もTNRへの理解も進み議員たちの関心も高まったとの事。議員の努力には感謝するが、果たして行政の姿勢が改まったと言えるかどうかは疑問である。
特に、多頭飼養を防ぐためと設けられた罰則規定。業者やボランティアの区別をどう考えるのか?養育頭数が10頭以上になった場合に、届け出て「行政の不作為」の結果、ボランティアに集中した猫対策へのどんな支援策があるのか?ただ、罰金だけを課して、どんな解決を示すと言えるのか?
また、地域猫活動についても具体的な支援策は無い。
TNR活動は県内地域格差も大きく、むしろやんばる3村(国頭村、大宜味村、東村)では世界自然遺産登録に絡む「猫条例」によぅて外猫を全てゼロにするための目的で自治体による回収後はR(リターン)は許されない。やんばる3村で捕獲された猫たちが果たして安全な里親先に委ねられているかは明らかではない。
10月の半ばに国頭村住人がはーべーるーに駆け込んで来た。羽地の道の駅の駐車場に多数の仔猫が遺棄されていて観光客が見つけて困っているのに出会ったと言う。彼女はにゃごねっとの「北部アクションプラン撤回」の署名を思い出し、国頭村に連れて行っても所詮『殺処分』にされるので、何とかならないか…との相談だった。既に店内は市内で遺棄された猫たちで満杯で…しかし、小雨混じりの寒さの中、飢えた仔猫たちを放置も出来ない。先が見えないままに、現場確認のために同行した。そこには、まだミルクも欲しい幼い仔猫たちがサトウキビ畑の中にばら撒かれていた。どんな解決策も見えなかったが、怯える仔猫たちをチュールで誘き寄せて、1匹づつ手づかみして保護した。全部で4匹、残りは居ないことを確認して市場に戻った。満杯の店内から、メンバーのボランティアさんに数匹の猫を預けてようやく仔猫たちの居場所を確保した。まずは全員を医療にかけて、風邪の子の治療から始めた。それから2ヶ月4匹はスクスク育ち、クリスマスの午後に2匹の兄妹がトライアルに出発した。ほっとした矢先、この日も複数件の保護相談。しかし、どんなに頑張っても私たち個人ボランティアの限界である。子どもに仔猫を持たせて預けに来る親たち、受けることがが出来ない現実の中で私たちは苦しむ。身も心もボロボロの中で虚しい「沖縄県動物の愛護及び管理に関する条例」の策定を聞く。
せめて一時保護施設が欲しい。たくさんのボランティアさんたちの切実な声が上がっている。条例案は行政より複数の県内の愛護団体からの意見聴取があったと言う。しかし、私たち個人ボランティアには何の相談もなく、まして遺棄や保護の現場調査すら無い。
唯一、県内外で話題になった「外猫への給餌、水やり禁止」項目が削除された事だけが宣伝されて世間では拍手されている。何のための愛護団体なのか?現実に苦難の中にある猫たちやボランティアを置き去りにした組織防衛に過ぎない。まして、やんばるには責任ある愛護団体などひとつも無い。
1年間塩漬けにして、世間が忘れた頃に地元の住民の合意なきままにあらゆる計画が執行される悪しき沖縄県行政の慣いは繰り返される。それに違を唱えるものはほとんど無い。
水道の蛇口を開け放しのままに(過剰繁殖防止策も適正飼育啓蒙もせず、TNR費用も基金依存)ボランティアに雑巾がけさせている沖縄県による「人と動物が共生する社会の実現」は絵に描いた餅に過ぎない!
やんばるの猫たちの地獄は加速している。(写真は遺棄された4匹のスクスクと育った子猫たちの姿)