
【SAC会報3月号】SACは、マンスリーサポーターのみなさまに、毎月、前月のダイジェスト版を掲載した会報を配信しています。こちらにも掲載します。
みなさまもすでにご存じのことと思いますが、ドゥテルテ前大統領が、3月11日に国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に基づきフィリピン警察によって逮捕されました。本当にこんな日が来るとは思いませんでした。
マルコス大統領陣営とドゥテルテ陣営との確執が、この結果をもたらしたという見方もあります。でも、ドラッグ戦争で殺害された人びとの遺族や人権活動家、人権弁護士らの勇気と知恵とたゆまぬ努力なくして、ICCの捜査は始まらなかったと思います。
昨年8月にアジア太平洋法律家連盟と協力して開催した講演会で、遺族の現状や正義を求める闘いについて報告してくださったジェーンさんらもたいそうドゥテルテの逮捕を喜んでおられました。でも、その喜びはつかの間でした。今、ネット上やリアルな日常生活の中で、ドゥテルテ支持者らからの罵詈雑言、誹謗中傷、差別などに苦しめられているのです。
たとえば、こんなことがありました。
夫の遺影を胸にしたジェーンさんの写真がネット上の記事に掲載されたのですが、その遺影が別の人の写真に取り替えられました。その投稿のコメントには、「この遺影はこの人の夫ではない」などの書き込み。そして、その投稿は1万回以上シェアされています。また、ドゥテルテ逮捕を報じる大手メディアのフェイスブック投稿記事のコメント欄には、ドラッグ戦争における殺害を擁護したり揶揄したりする言葉が躍ります。
5月に、上院議員(全24議席中の12議席)や地方自治体首長などの選挙を控え、ドゥテルテ前大統領やその娘サラ副大統領支持者らは、マルコス大統領が「国民を外国に売った」といった主張をし必死に現政権を非難しています。また、彼らはドゥテルテ前大統領を被害者に仕立て上げ、少なくない国民の同情を惹くことにも成功しているように見えます。ドゥテルテ前大統領は、とつぜん、弱々しい振る舞いで、その変化も気になるところです。
どんなに支持していても、どんなに好きでも、だめなものはだめですよね。どんなに権力をもっていたとしても、当たり前のことですが、自分の気に入らない人を殺す権利など誰にもありません。でも、もはや、それすらもドゥテルテ支持者らには届かないかのようです。
2021年に、トランプの支持者らがホワイトハウスを襲撃した事件を思い出します。
ICCのおかげで5月の選挙が有利に進むとマルコス陣営がほくそ笑んでいるとしたら、大間違いだと言いたいです。人権を無視して、自分らにとって不都合な人びとに弾圧を加え続けるならば、次はあなたたちの番なのですから。
2月に配信した記事は以下です。
2025/02/05【週刊「気になる」見出し】
2025/02/12【週刊「気になる」見出し】
2025/02/13【フィリピン・ニュース深掘り】弾劾裁判で逆転を狙う3陣営
2025/02/15【人権侵害タイムライン】(2025年1月24日~2月13日)
2025/02/19【週刊「気になる」見出し】
2025/02/24【フィリピン・ニュース深掘り】乱用され、でっち上げられるテロ資金供与罪
2025/02/27【連載 まにらから】サラ・ドゥテルテを切る