障害がある人の「声」に耳を傾ければ、日本はもっと素敵になれる。私はそう信じています。

皆さんはユニバーサルデザインというものを知っていますか? 障害のある方のために物や設備を設えたら、誰にでも優しいものになった! そういうものですよね。

代表的なものだと、自動ドア、センサー付きの水道、コイン投入口が広い自動販売機などがあります。これらの物は、障害がある人にとって使いやすいだけでなく、老若男女問わず、みんなに便利なものです。


実は、曲がるストローも、もともとは横になりながら水分補給ができるよう考えたものだったとか。素敵!ほんとうに素敵ですよね!

もちろん、バリアフリーには微妙な問題点もあります。視覚に障害がある方のために音声案内を細やかにすると、今度は聴覚過敏の人には厳しいとか、点字ブロックが車椅子の歩行時には振動になるとか……。でもそんな時、日本人って、「そうだったのか!知らなかった!悪かった!ではどうしようか?」と、何とかしようと思うじゃないですか。

このコロナ禍の中でも、マスクやフェイスシールド、手指消毒や検温器ですら、色々工夫したものが出て、一気に大きな進化を遂げましたよね。

このユニバーサルデザインを「心にも」デザインすることを提唱したいと思います。


先日、久しぶりに長嶋名誉監督をテレビで拝見しました。長嶋さんも失語症です。
「勝つ。勝つ。勝つ。」と選手を激励していました。
そこだけ切り取って放送したのであれば、相変わらず元気な長嶋さんという感じですが、前後の部分を通して聞くと、その言葉が精いっぱいである様子がうかがえます。
病前の長嶋さんなら、ちょっとおかしな英語の使い方を指摘されるくらい流暢でしたよね。

失語症は、ある日突然、病気や事故が原因で、脳の中で言語をつかさどる部位が損傷して負うものです。
もし私が、病気や事故などで、「聴く」「話す」「読む」「書く」のどれか一つでもできなくなったら、私はたとえ四肢が無事であっても、今まで通りには生きていけないと感じます。
そう、この障害があると、私たち人間全員、生きていくのがとても困難になるのです。
なぜかというと、人間は他人とコミュニケーションをとりながら生きる生き物だからです。

皆さん、生きていく上で言葉を使わない人なんていませんよね?
「いや僕は、特に人と話さなくても構わない仕事をしているんでぇ」なんていう仕事の人でも、ネットやテレビは見るでしょう?
そこに出てくる人たちの会話が分からないとしたら?
道に迷った時は人に聞いたり、スマホで調べたりするでしょう?
その時に相手に何を伝えるのか、自分が何を調べるのか分からないとしたら?
相手が答えてくれても、スマホに検索結果が出ても、それが何をいっているのか分からないとしたら?
このように私がたとえ話を作ると、一瞬皆、分かったような気になりますが、でもね、それが本当にその通りなのかは、私には、下手したら一生分からないんです。
ましてや、苦しさ、もどかしさ、つらさは、当事者にならない限り分からないんです。
よく、失語症の困り事について、「知らない外国へ突然訪れたよう」などと例えられますが、「そんなの、外国語ってだけでしょう? 少しずつ覚えていけばいいじゃん」と思ってしまうのも、大きな勘違い。
そう。言葉の理解が難しくなったことは、疑似体験すらできません。このことが、失語症のある人への理解が難しい原因だと思うんです。

※ 症状は人によってこれも実はこの障害理解を複雑にさせている要因の一つです。

脳つながりで話が飛びますが、人間の脳ってすごくって、ストレスにさらされると、オキシトシンというホルモンが出るらしいんですよ。でね、このホルモンは人との親密な関係を強めるように促すんだそう。

「ストレス中!ストレス中!内にこもらず、ただちに人と会って、悩み事を話しなさい。抱きしめてもらいなさい!」

そういう指令を出す。で、実際、そうすると落ち着く。ホッ。
しかもそれだけでなく、「誰かのためになりたい!」という信号も一緒に出すのだそう。これってすごくないですか? 自然災害中やコロナ禍の中、ストレスがかかった人間は、このオキシトシンで「助け合え!」ってつき動かされるんです。災害大国日本の国の人なら、「ああ、あの時のあの気持ちがそうだったのか」と納得する話だと思うんですよね。例えば、自然災害の避難所などでは、自分が大変な目に遭っているのに、弱い人に手を差し伸べる人たちを何人も見てきました。

でもね、キスやハグの文化のない日本人って、人を急に抱きしめることなんて、恥ずかしくてできないですよね? でも寄り添うことはできます。人がそばにいるだけでいい!って感覚はありますよね。
そしてそこに、少し知識があれば、鬼に金棒ですよね。


そんな分かりにくい障害、見えない障害と言われる失語症について、少しでも知ってほしいと思い、本を作りました。厳密に言うと、作っている途中です(笑)

当事者の一人語りでもない、支援者の一人よがりでもない、いろいろな立場の人が、それぞれに失語症について書いた本を出そうという話が持ち上がり、そうして、執筆者と編集者、デザイナーさんを集めました。

☆表紙デザイン

祝部英明さん(当事者)
島根県にある当事者自助グループ「出雲 縁 ing トークの会」代表

執筆者一覧

【当事者の立場から】

馬渕敬さん
ロコバント・エルンストさん
Mさん
加藤俊樹さんと米谷瑞恵さん
松阪康弘さん

【関係団体から】

日本言語聴覚士協会 立石雅子さん
特定非営利活動法人日本失語症協議会 理事長 園田尚美さん
一般社団法人 ことばの道デイサービス 総括責任者 安居和輝さん

【リハ職から】

三鷹高次脳機能障害研究所所長 関啓子さん
NPO法人Reジョブ大阪、株式会社くるみの森 西村紀子さん

編集者

金井一弘さん(当事者家族)
株式会社星湖舎

それぞれの方については、クラウドファンディングの中でゆっくり紹介していきます!

出版社

この本は、一般の出版社からではなく、POD(Print On Demand)という方法で出版します。
簡単に言うと、書籍ファイルをネット上に置き、注文時に必要な冊数を印刷して送付するという方法です。Amazonにも掲載し、注文できるようにする予定です。


このクラウドファンディングでは、この本をメインのリターンにしています。一人でも多くの人に、失語症の基礎知識と、当事者の声、リハ職の声を届けたい!
それが私たちの希望、心のユニバーサルデザインの入り口です。

クラウドファンディング開催中に、表紙、目次、どんどん決まっていきます。「活動報告」というコーナーを使って、お知らせしていきますね。
一緒に本を作っているつもりで、3週間、どうぞお付き合いください!


クラウドファンディングを盛り上げるために、プレゼントも用意しました!
去年、失語症の日のロゴができたのですが、それをシールにしました。
先着合計100名様のリターンに同封します。(冊子10冊の人には10枚送ります)


クラウドファンディング終了後、4月25日には、今年も記念日イベントを開催します!
こんなご時世なので、オンラインで開催します。
動画を配信するのですが、感染者が少ない地域では、お住まいの地域のガイドラインに従い、皆で集まって視聴することも可能です。
実はもう、全国から「うちはこんなことします!」というお知らせも届いています。
そういうイベント情報も、このクラウドファンディングで紹介していきます!


主催団体

このクラウドファンディングの主催は、失語症の日制定委員会です。
失語症の日制定委員会についてはこちらをご覧ください。
ホームページ
https://peraichi.com/landing_pages/view/425


支援の使い道

いただいた支援は、9%がCAMPFIRE(GoodMorning)へ。

残りで、
表紙デザイン料、編集料、執筆料、事務手数料、配送料、梱包料、仕入れリターンのお支払い(本、Tシャツなど)などに振り分けます。
なお、梱包作業には、失語症のある方に手伝ってもらう予定です。
少しでもその方たちの工賃に値するものが支払えることを願っています。


本文を書くにあたり参照した参考文献など。

『マイノリティデザイン-弱さを生かせる社会をつくろう-』 澤田智洋
https://www.amazon.co.jp/dp/4909044299/

『ストレスと友達になる方法』 TED ケリー・マクゴニガル
https://www.ted.com/talks/kelly_mcgonigal_how_to_make_stress_your_friend/transcript?language=ja

なお、失語症は、ひとりひとり症状も困り事も異なります。ですから、この本文中に例えた不自由さがすべての失語症の人に起きていることとは限らないことをお断りいたします。

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください