はじめに

はじめまして。一般社団法人進学支援センター沖縄の坂間俊朗と申します。

私は、東京から沖縄に移住し専門学校の教員をしながら、ファイナンシャルプランナーとして進学資金のセミナー、個別相談を行ってきました。

私達が住む沖縄県では18歳未満の子どものうち3人に1人が貧困状態(年間の所得122万円以下)にあり、進学を希望しても、経済的な理由で断念しなければならない子ども達がたくさんいます。

最近では子どもの貧困対策に国や都道府県が中心となって取り組み、様々な支援策が整備されてきました。また、行政機関以外の教育機関や支援団体による支援も増え、子ども達の進学へのサポートも充実してきました。しかし、せっかくの支援情報が支援を必要とする子ども達に届いていないのです。

さらに、昨年から流行している新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、観光業が主力産業である沖縄県は経済的打撃が大きく、今後進学はおろか、生活自体が成り立たない子ども達が増えると予想されます。

そこで私は、専門学校を退職し、経済的な理由で進学を断念する子ども達を減らすことにより貧困の連鎖を断ち切るため、進学情報の提供とひとり親世帯や困窮世帯に対する支援を行う団体を設立することにしました。


専門学校での出会い

私は15年前に東京から沖縄県に移住し、専門学校の教員になりました。専門学校に入学してくる学生と関わる中で一番驚いたのは、学力が高い子ども達が多いということでした。東京で生まれ育った私からすると、入学試験を突破できなかったとは思えない学力を持った子ども達が専門学校に入学してくること自体が不思議なことであり、詳しく話を聞いてみると、次のような答えがほとんどでした。

「 大学に通うと4年間学費を払わないといけない。専門学校なら2年間で卒業できるし、就職に有利な資格が取得できるから専門学校を選択した 」

私が生まれ育った環境では学力が低いために大学進学をあきらめる高校生はいても、学費が高いために大学進学を諦める高校生はいなかったので、とても驚きました。

彼らはもともと学力が高いことに加え、知識を吸収することに貪欲だったので、素晴らしい成績を残しました。就職先も県内大手企業に決まり喜んで卒業していきました。しかし、私の中には1つの疑問が残っていました。

この子達は、大学に進学していたらどうなっていただろう。

学びたいことや、やりたいことがあるから大学へ進学したかったはずなのに、学力ではなく学費が高い(多くかかる)という理由で進学を断念している子ども達がいる一方で、周りが大学へ進学しているから、まだ就職したくないからという理由でなんとなく進学している子ども達がいる。家庭の所得格差が子ども達の学力(学歴)の差になるのはおかしいと思い、そんな子ども達を支援するためファイナンシャルプランナーを志すようになりました。


ファイナンシャルプランナーとして活動する中での出会い

4年を費やし、ファイナンシャルプランナーの中でも最難関と言われているCFPを取得し、ファイナンシャルプランナーとしての活動をはじめました。その活動の中で出会った子ども達は専門学校への進学すら難しい子ども達でした。私が専門学校で出会う子ども達は、まだまだ恵まれている子ども達だったのです。

学費を稼ぐために、高校を卒業し季節労働に行く子ども達。
幼い兄弟のため自分の夢をあきらめ家計を助ける子ども達。
高校に通う交通費を節約するため片道10km歩いて通う子ども達。

例えをあげればキリがありません。

普通なら自分の置かれた境遇に不満を言いたくなる中、こんなことを言う子どももいるのです。

「経済的不便はあると思いますが、今の生活はとても満足している。頑張って家計をささえることも自分の役目だと思うし、とても幸せです。」

私は自分がなんて恵まれた環境で生活していたのかを思い知らされました。同時に、あのまま東京で生活していたら想像すらしなかったことが同じ日本で起きていることに衝撃を受けました。

これが私がこのプロジェクトを始めようと思ったきっかけです。


沖縄の現状について

今日本の子どものうち7人に1人が貧困と言われています。21人を1クラスと仮定すると、そのうち3人が貧困状態になります。

沖縄はその約2倍にあたる3人に1人が貧困状態にあります。同じように、21人を1クラスと仮定すると、そのうち7人が貧困状態になります。

割合にすると29.9%となり、2012年、日本が子どもの貧困問題に取り組むきっかけになった過去最悪の貧困率16.3%の2倍近い水準となっています。また、内閣府が公表している平成26年版子ども・若者白書では子どもの貧困率の国際比較が行われていますが、OECDに加盟する先進諸国の中でもっとも悪いイスラエルの28.5%を超える水準となっています。


なぜ沖縄県では子どもの貧困が多いのか

沖縄県の最低賃金は全国で最も低い792円です。収入は低いですが、携帯電話の料金や日用品の金額は全国水準かそれ以上の料金を支払っています。私が東京で働いていた頃、財布が厳しいときに頼りにしていたコンビニの弁当やファストフードは、沖縄ではお金のあるときに買うものなのです。さらに車社会であるため、車の維持費が多くかかることや、インバウンド需要による地価の高騰を受け高くなった住居費も家計を圧迫する要因となっています。

これらの要因により経済的に困窮した児童が多くなり、高等教育を受けることができず、学歴による所得格差により貧困が世代を超えて連鎖し、さらなる貧困を生み出しています


届かない支援策

この現状を打破するため、政府や沖縄県は子供の貧困対策に取り組み、様々な支援策が誕生しました。また高等教育機関の中にも沖縄の子ども達のために特別な支援策を実施したり、民間団体による支援もたくさん行われています。

しかし、各団体がせっかく行っている支援策も彼らには届いていないのです。
昨年、文部科学省や日本学生支援機構が精力的に広報活動し、私も各高校やセミナーで力説した大学無償化について、困窮世帯に対して認知度調査を行った結果が次の通りです。

あれだけ広報を行ったにも関わらず全体の2割程度しかその存在を知らなかったのです。どんなに良い支援策を作っても支援が必要な人達に届かない。政府や沖縄県が頭を悩ませるこの問題に、セミナーに参加された保護者の方から寄せられたご意見が解決の糸口となりました。

1、2時間のセミナーに参加しても一度に理解できない。
世帯ごとに状況が違うので、いつでも相談できる窓口を作って欲しい。

ホームページで告知すれば調べてくれるだろう。
ポスターの掲示やチラシを配布すれば見てくれるだろう。
セミナーを定期的に開催すれば来てくれるだろう。

そうです、私達は私達の普通を彼らに押し付けていたのです。制度を作る人も、制度の広報をする人も、セミナーをする人も、みんな高等教育を受けられた人がほとんどです。私達の普通は、彼らの普通ではないのです。専門学校で子ども達に授業をしていたときに肝に銘じていたことが、相手が大人だからという理由だけで忘れていました。

ひとり親世帯や困窮世帯の多くは長時間労働で収入を確保しています。労働時間以外は家事や育児に追われ、睡眠時間を削って生活をしています。そんな中、役所や学校に相談に行くことは不可能に近いです。インターネットで情報を探す時間すら惜しい生活をしています。そんな状況を理解しないまま、私達の「普通」を押し付け、伝えた気になっていたことを今とても反省しています。

情報を集める時間がないなら代わりに集め、内容がわかりにくければわかるように、個別の事情にあった支援策を一緒に考え、進学の道をともに探す「進学支援センター沖縄」を設立することにしました。


Connected Society 〜 つながる社会の実現 〜

支援が必要な人と各支援策をつなげることで、子ども達がそれぞれ希望する未来へつながる社会の実現に取り組む、そんな想いを法人スローガンである "Connected Society" に込めました。


いつでも相談できる環境を提供します

奨学金や各種支援制度などに精通した進学支援アドバイザーに、いつでもどこでも相談できる進学支援センターを設置します。宜野湾市普天間からスタートし、沖縄県内、離島も含め7箇所に設置予定です。センターに来ることが難しい場合はzoomや電話による相談も可能で、共働きやひとり親の方にも利用できるように、平日は夜10時まで、土曜日も利用できます。

また、今まで高校の進路室で提供されていたため、保護者の方が直接入手することが難しかった進学に関する資料や、受付時間中に行くことが難しいため入手が難しい行政や各支援団体が発行している資料など、高校生や保護者の方が必要としている資料を完備することで、忙しくなかなか情報が収集できない保護者の方のサポートを行います。

さらに、パソコンやインターネット環境の整っていない方のために、セキュリティ対策のされた無線LAN環境や、オンライン学校説明会に参加するための機材(iPad)を無償で貸し出し、オンライン学校説明会に参加する環境を提供します。


支援情報の収集と発信をします

今までセミナーとして行っていた情報発信をYouTubeやnoteなどソーシャルメディアを活用し、いつでもどこでも見ることができるようにします。YouTube番組では、奨学金や支援内容の解説や手続きの流れ、新しく募集の始まった支援情報などタイムリーな情報を提供します。通信量を抑えたい方や、ゆっくり内容を確認したい方のためにnoteの記事としてYouTubeと同じ内容を文字でお届けします。

番組では高校生や保護者の方のリクエストに応えたり、質問の多い内容や多くの人に関係しそうな内容を織り交ぜながら進路を考える高校生や保護者の方にとって役立つコンテンツを提供します。


進学支援手帳を配布します

進学費用に関する資料や、沖縄県の高校生が利用できる支援情報など、進学を迎える高校生が自分で進学資金について考えるための情報を網羅した手帳を高校3年生および高校の教員全員に無償で配布します。

進学支援手帳には奨学金の申し込みスケジュールや手続きの流れ、必要な書類など、スケジュールに関する情報や、志望校を決定した後、進学費用や受けられる支援策の情報をもとに、奨学金をいくら借りればよいのか、その金額を借りた場合返済がどのくらいになるのかを高校生が自ら計算できる「進学ワークシート」を掲載し、高校現場での進路指導の教材として、保護者と一緒に進路を考える際の資料として活用できます。


高校の先生と連携します

高校生や保護者の方と最も近い存在が高校の先生です。
毎年変わる奨学金制度や高校生に対する支援策など、新しい情報が増えるたびに高校の先生の負担も増えています。高校の先生が本来の仕事である教育活動に専念できるよう、高校の先生の負担軽減に取り組みます。

ヘルプデスク(相談窓口)
まず、奨学金制度や各支援制度の内容のほか、指導している生徒さんが利用できる支援制度に関する質問を随時受け付け、各高校の進路指導の先生やクラス担任の先生のサポートを行います。

支援情報の提供
授業の準備や担任業務など、忙しい先生に代わり奨学金に関する情報や県内の高校生が利用できる支援情報を収集し、情報を提供します。

情報の共有・連携
また、当センターで対応した生徒さんの情報を所属する高校の進路指導の先生や担任の先生と共有し、連携して支援を行います。


行政・高等教育機関・他の支援団体と連携して支援を行います

一般的に進学を考える際のポイントは学力進学資金の2つですが、困窮世帯の子ども達の場合は生活について考えなければなりません。彼らの中には学費が足りなくて進学できないのではなく、家族の生活を支えるために進学できない子ども達がいるのです。

そこで当センターでは、行政・高等教育機関・他の支援団体と連携し学力面・資金面・生活面のそれぞれに対し、各支援団体が各々の持ち前を活かした総合的な支援を目指します。


高校生のメッセージ(令和元年度沖縄子ども調査 高校生調査報告書より抜粋)

私は母子家庭で育ち、きょうだいもいます。母は私が幼いころから昼夜問わず働いて必死に育ててくれました。ですが、普通の人以上に身を粉にして働いているはずなのに、家計は苦しいです。母子手当やバスの定期の支援も受けることができ、非常に助かっています。そんな中、母は、病気にかかってしまいました。そのため、夢をあきらめ、高校卒業後、働くことも視野に入れています。私のような思いをしている人が、もっと苦しい、悔しい思いをしている人が、たくさんいます。夢のある人たちを、それを支える親たちを、もっと何かしらの形で支援していただけないでしょうか。私は、変わることを願っています。


自分が進学するとして、その負担が親を苦しませないかが不安です。親がどんなに大丈夫といっても、仕事に加え、アルバイトまでしている現状から申し訳なく思っています。とても不安です。


親の収入とかで、その子の学力が決まらないでほしい。どんな子でも自分が頑張れば何でもできるという希望と環境を整えてほしい。家で勉強しづらい人でも集中して勉強できる自習室みたいなところがもっと増えるといいなと思います。


保護者のメッセージ(令和元年度沖縄子ども調査 高校生調査報告書より抜粋)

沖縄はとにかく収入が低い。県民がもう少し豊かになれば子どもたちの未来も変わってくると思う。今、子どもたちに何ができるか、少しでも多くの教育を受けさせる事だと思います。それには、とにかくお金、お金がかかるんです。でも、沖縄は給料が安いんです。命を削って昼も夜も働くしかないと思います。そのうち、体を壊します。そうすると働けなくなり、いい教育が受けられなくなります。それをどうにかしてほしい。


高校2年生の娘は「大学希望」の夢をもってるので是非できるのであればかなえてあげたい。しかし経済的に苦しいことを娘に伝え、やる気のつぼみをつんでいたかのように思います。本人は「アルバイトでかせいで大学行くんだ」と夢をあきらめないでいます。でも我が家は苦しいのでアルバイトで貯めたお金も生活費にあてたりして悲しい現実です。娘の「夢」に行政の力をかしていただけたらと思います。どうかよろしくお願い致します。


このアンケートとても良いと思いました。相談したくてもその場所がわからなかったり仕事のタイミングと合わない人は多いと思います。親にも子どもにも、そういう相談場所や方法などもっと広く使うことができたらと思います。相談する事を警戒したり、敷居高く思わないでいられるようなサポートを期待しています。

全文を読みたい方はこちらから



資金の使い道

本クラウドファンディングでは、300万円の資金調達を第一目標にしています。

ご支援頂いた資金は、進学に悩む高校生やその保護者の方がいつでも安心して相談に来られるような環境を整えるために使用します。

【主な用途】
・個別相談を行うための相談ブースの設置費用
・離島などセンターまでの距離が遠い相談者のための出張個別相談にかかる費用
・インターネット環境のない高校生のために貸出す機材の購入費用
・進学支援手帳の印刷費用 など


実施スケジュール

8月下旬  一般社団法人設立手続き
9月中旬  ウェブサイト開設
10月〜   連携機関との打ち合わせ
2月上旬    クラウドファンディング開始
2月末     クラウドファンディング終了
3月    進学支援センター沖縄活動開始

<All-in方式で実施します。>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。
目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

リターン

【 3,000円 】
◆ 感謝の気持ちを込めてお礼メールをお届けします。

【 10,000円 】
◆ 感謝の気持ちを込めてお礼メールをお届けします。
◆ ホームページにお名前掲載

【 30,000円 】
◆ 感謝の気持ちを込めてお礼メールをお届けします。
◆ ホームページにお名前掲載
◆ 進学支援手帳

【 100,000円 】企業・団体向け
◆ 感謝の気持ちを込めてお礼メールをお届けします。
◆ ホームページ・パンフレットにお名前掲載

【 500,000円 】企業・団体向け※先着2口
◆ 感謝の気持ちを込めてお礼メールをお届けします。
◆ ホームページ・パンフレットにお名前掲載
◆ 営業用車両の車体に支援企業・団体様の情報を掲載

最後に

困窮世帯の子ども達の中には、家族のために夢を諦めなければならない子どもがいます。それでも家族を想い幸せを感じている子ども達や、そんな子供の思いを知りながらも、どうすることもできず心を痛めている保護者達がいます。

私はそんな彼らの想いに寄り添い、希望の進路に進めるようサポートし続けます。

生まれた環境に関わらず、子ども達が希望の進路を選択できる社会
学びたい子ども達の学ぶ機会を奪わない社会

それを実現する進学支援センター沖縄へどうか応援をお願いいたします。


代表理事の略歴

一般社団法人進学支援センター沖縄代表理事。

2006年 東京から沖縄へ移住。専門学校の教員として勤務。
2009年 経済的理由により進学を断念している子ども達を支援するためFPを目指す。
2012年 日本FP協会CFP。日本FP協会沖縄支部所属。
2016年 文部科学省認定修学支援アドバイザー(沖縄県)
2017年 日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(平成29年9月認定)
2020年 沖縄県「令和2年度地域子ども・若者支援活動補助事業」認定

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