2025/03/06 20:00
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今日一日を生き抜く。
一日一日の積み重ねが“更生”。


——チャンスサポート代表理事・川中正喜さん

▶2024年12月10日パトロン限定ウェビナー ドキュメント


犯罪者を生み出さない環境づくりを行う「一般社団法人チャンスサポート」の代表理事、川中正喜さんをゲストに迎えたパトロン限定ウェビナーが、昨年12月10日に開催されました。

川中さんはご自身も少年院・刑務所に入っていた経験を持ち、「どうやったら塀の中に戻らなくて済むのか」を考え続け、更生支援の活動に尽力されています。

「仕事」「住む場所」「相談相手」の三つが更生には必要との考えから、ご自身でその三つを提供しながらも、「一馬力ではダメだ」と求人雑誌『Bridge(ブリッジ)』を発行。

更生に関わる人を増やし、一馬力を百馬力にしようと活動されています。

そんな川中さんの活動の様子を語っていただいたウェビナーの様子をダイジェストでお届けします。

※ウェビナーの実施および本記事の作成は、首都圏若者サポートネットワーク「若者おうえん基金」による助成金を活用させていただきました。

▶ゲストプロフィール
チャンスサポート代表理事・川中正喜さん

1975年京都生まれ。
子供のころより寂しさの表現が人一倍苦手で自分の感情のコントロールがうまく表現できない幼少時代を過ごす。
小学生、中学生とやんちゃを重ね中学3年生の時、校内で逮捕となる。
少年院や刑務所に入り多くの人・ものを失う。
30代半ばすべてを無くし、このままではだめだと目が覚める。
そこから一転し2014年に会社を設立、再犯防止活動を始める。
そして2018年には再犯防止支援活動として正道塾を立ち上げる。
2020年に安心安全な世の中を作るために一般社団法人チャンスサポートを設立する。
障害者グループホーム きさら代表でもある。

どれだけ裏切られても、自分のために更生支援を続ける

今回、お話をうかがった、育て上げネットで更生支援を行うスタッフ、髙崎大介には、川中さんに聞いてみたいことがありました。

それは、「少年たちに“それはないよなぁ”と落胆するような裏切りをされても、川中さんは更生支援をあきらめない。それはなぜなのか」ということでした。

コロナ禍でお金の算段がつかず困っているときにお金を盗まれる。何時間も話し続け「僕も川中さんのように人を支援したい」と言った少年が翌朝、人を刺してしまう。髙崎はそんな話を聞くたびに、それでもなお更生支援に尽力する川中さんに、「なぜ続けられるのか」を聞きたいと思ったのです。

川中さんは髙崎の質問に答えます。

「それでも、続けられるのは、自分のためにやっているからでしょうね」

川中さんは、「自分が刑務所に戻らないために少年たちの更生支援をやっている」と言います。「少年のためにやっている」と思えば、「お前のためにどれだけお金を使ったと思っているんだ!」と見返りを求めてしまう。どんなに裏切られても、少年たちのおかげで自分の目標は達成できている。だから、それでいい……と川中さんは思っているそうです。

「更生支援を一生やっていると思います」

川中さんは、笑いながら、きっぱり語ってくれました。


出院後半年で、自分で家を借り、自分で生活基盤を立てることができるか


川中さんは、自立準備ホーム(刑務所・少年院等の出所者に自立準備支援を行い、住まいを提供する場所)を運営しながら、障害者向けのグループホームも立ち上げています。それは、自立準備ホームには保護観察期間だけしかいられないからです。

「少年院出院者の滞在期間はだいたい半年。その期間内に、自力で生活する基盤を作らなければいけないんです」

最近の少年院出院者は発達障害のある少年も多く、とてもその期限内に自立はできない。だったら、グループホームで引き続き面倒を見ながら、地域で自立できるようにゆっくりやっていこうと考えたそうです。

そんな川中さんのところへ、「少年院を出た非行少年を回してくれませんかね」と怪しい電話がかかってくることもあります。

「善悪の判断がしづらい、障害を抱えているような、ちょっとポーッとした子を狙っているんですよね」

今まで誰からも構われず、寂しく育ってきたような子が、あたたかい言葉をかけてもらったり、ごはんに連れて行ってもらったりする。すると、簡単に相手を信用してしまい、「見張りをしろ」「ここに行って荷物を受け取ってこい」と利用されてしまうのです。

「そういう悪質な業者は、いっけんもっともらしいことを言い、めちゃくちゃ爽やかに言ってきますからね」

近ごろは“闇バイト”という言葉がありますが、少年たちを“だます人”に注意してほしいと、川中さんは注意を促していました。


塀の中と社会の架け橋になる求人雑誌『Bridge』


川中さんは、求人雑誌『Bridge(ブリッジ)』を発行しました。これは、少年院・刑務所で読むことができるという画期的な求人雑誌で、表紙には「就労支援雑誌Bridgeに掲載の企業様は、少年院・拘置所・刑務所内でも面接が可能です」と書いてあります。

「更生支援をしようという意気のある社長さんたちの言葉を掲載して、“この社長のもとで働きたい”と思えるようにしています」

川中さんには、かねてから悩みを抱えていました。川中さんがどんなにがんばっても面倒を見られるのは四人ぐらいが限界。多くの出院者を一馬力で支援するのは無理があると考えていたのです。

「でも、『Bridge』にはたくさんの社長さんが手を挙げてくれています。塀の外に僕みたいな支援者がたくさん増えれば、一馬力が百馬力になるかもしれない」

ゆくゆくは女子刑務所や女子少年院にも置いてもらえるようなものを作りたいと、川中さんは語ってくれました。

「“更生”という字を書いてみてください」

川中さんは言います。たしかに、“更生”という字は「さらに生きる」と書きます。

川中さんは、少年たちにつねづね「今日一日を生き抜こう」と声をかけるそうです。今日一日、一日の積み重ねが“更生”につながっていきます。

「少年たちは、仕事、食べるもの、寝るところ、相談相手を必要としています。育て上げネットさんにいただく食糧が今日一日をつないでくれています。僕たちはものすごく助かっています」

みなさまからの寄付によって、川中さんが面倒を見ている少年のもとへも食糧が届けられています。

まずは「知ってもらう」こと。私たちはこれからも、少年院の内外で活動し、みなさまにその活動内容をお知らせしていきます。

認定NPO法人育て上げネットは、クラウドファンディング「少年院を出院した子どもたちに寄り添い、更生自立を支え続けるプロジェクト」を行っています。こちらでの寄付をもとに、少年たちに食糧を届けたりしています。

ご興味のある方はぜひ、クラウドファンディングのページをのぞいてみてください。

https://community.camp-fire.jp/projects/view/73714




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