標高3,000mを超えるアルプスの山々を自らの足で繋ぎながら、150時間の制限時間内のゴールを目指すレース「トルデジアン Tor des geants」。軽量小型のデジタルカメラで撮影する参加者は多かれど、かさばりコストもバカにならないアナログの8mmフィルムとカメラで動画を撮影し、その上で全行程330km、累積標高24,000mの完踏を過去に達成した者はないと聞く。僕の人生最大の「挑戦」をご支援ください!

 

▼ちょっと長い自己紹介

高校2年生の時にバスケットボール部で挫折して以来、 今ほど自分を鍛えることに打ち込んだことはありません。 きっかけは長男の誕生。日々成長する姿を彼に見せつけられ、 あろうことか僕は、 1歳足らずの息子にライバル心を燃やし、その時、この挑戦に至る門が開かれたのです。 

 

「父ちゃんだって、まだまだ成長するぜ!」

体力作りのためには、まず走る! 30歳をとうに過ぎたその決心の日から僕は、 少しずつジョギングを始めました。 高校生の頃の体力がピークですから、 鍛えていない体はドブのように濁り、 壊れた機械のようにギシギシ悲鳴を上げたのはいうまでもありません。とはいえ幸い深刻な持病も怪我もなかったので、 とにかく最初の1歩は踏み出すことができました。 自宅近所の鴨川(京都市)を恐る恐る走ったのを覚えています。 授かった息子が、目に見えて成長する様はとても感動的でしたし、その息子のためにも、そして自分自身のためにも強くなりたい。ひとまずゴールは定めず、現状から少しでも成長・進化することを目標に掲げました。時を同じくして、「体力・肉体・体育」というマッチョな言葉とは無縁と思える親しい仲間たちが、 次々にフルマラソンを完走している事実が気になりだしました。

 

「あいつにできるなら、 もしかしたら俺もマラソンランナーになれるのかも…」

10km走でもハーフマラソンでもなく、フルマラソン42. 195km。17歳の時に10km走らされたのを最後に、 長距離走など興味さえありませんでしたので、 当時は途方もない数字、 果てしなく遠いところにある世界に思えました。なにせその頃の僕は5km走るのが精一杯。筋肉痛と呼吸困難と自己嫌悪のフルコースを味わい、75kgの体重に膝は悲鳴をあげました。それでも、 ごく稀にちょっと気持ち良い走り方ができたり、溜め込んだ脂肪が明らかに落ちたり、 痛む膝は着地の方法を変えると痛くないことを発見したり、ちょっとしたスランプや怪我を自分で考えながら試行錯誤して克服することがとても楽しくなっていました。加えて、スポーツ臭ゼロのあの友人も、不摂生の塊のようなあの先輩も、みんなフルマラソンを完走しているんだから、「きっと俺だってできる」。できないはずがない。そう自己暗示をかけることで、どんどんジョギングに「ハマっていく父ちゃん」を自覚し始めました。2012年にハーフマラソンを、 そして2013年にフルマラソンをそれぞれ初めて完走して以降、 人生最長距離は増え続け、また、裸足で走ったり山を走ったり新しいエッセンスを加えながら、2014年には琵琶湖1周200km+αを完踏するに至りました。できるだけ長い距離、できるだけ過酷なコースプロファイルを目標にして、いつしか高校生の頃の自分を超えることはできたと思います。そしてその頃、「トルデジアン」を知りました。トルデジアン完踏こそが、成長を目指す僕のゴールになったのです。

 

「世界で一番走れる映画修復技術者に俺はなる!」

他方で僕は、古い映画フィルムの修復技術者です。 僕が生まれるよりずっと昔の、劣化しダメージを負ったフィルムを手作業で補修し、 新しいフィルムで複製を作り、デジタル化するための準備する、 とても根気のいる仕事です。フィルムに興味を持ち、 この仕事に就いたことも、思えば高2でスポーツの挫折を味わい、 持て余した時間で映画を見まくったことが遠因だと思っています。 映画はスポーツから離れた時に僕の心の隙間を埋め、 見知らぬ世界への窓となり、 大学でイタリア語とイタリア映画を勉強するという選択肢を与え、 映画の復元と保存という新しいフィールドを教え、そして今では、 仕事として日々の糧になって、 相変わらず僕を成長させてくれます。技術者であるからには優れた技術者を目指すことはいうまでもありません。そしてやっぱり世界一になりたい。今すぐに世界一の凄腕修復技術者は難しいとしても、例えば…、体力では誰にも負けない、そう、例えば世界で一番走れる結構腕の良い映画修復技術者であれば、割と近い未来になれそうな気がしました。

 

▼「トルデジアンTor des geants」を知っていますか?

 英語では"Days of Giants"とも訳されるトルデジアンは、イタリアはアルプス山脈の麓、ヴァッレ・ ダオスタ州を約6日間かけて330km走るレースです。テレビ番組でも取り上げられることが増えてきましたので、名前は知らずとも、アルプスの山々を楽しそうに、あるいは意識も朦朧とした様子で歩いている映像を見たことがある人も多いかも知れません。一方で「レース」とはいったものの、「(走れるならば走る)登山」のようなものですから、順位を争うようなトップ選手も含め、昼夜を問わず急峻な山々の登り降りを延々繰り返す「修行」、あるいは苦しく厳しい環境に身を投じて自分を見つめ直す「旅」のようなものといえます。食事や飲み物、休憩場所や仮眠ベッドは提供されますが、150時間の制限時間内に累積標高(登りの合計)24,000m、つまり富士山ならば海抜0mから6回以上、エベレストなら3回登ることに相当するわけですから、のんびりハイキングを楽しむのとは次元が違うことはご理解いただけると思います。トルデジアンのウェブサイトで写真も見ることができます。

■トルデジアン2018 / Tor des geants 2018
*日時: 2018年9月9日正午スタート〜9月16日(制限時間150時間)
*参加者: 約900人
*ウェブサイト: http://www.tordesgeants.it/it/content/tor-des-géants

 

▼8mmフィルムを知っていますか?

デジカメやビデオカメラが登場する以前、動画を撮るためにはフィルムを使っていた時代があります。その普及版である8mmフィルムは、文字通り8mm幅のプラスチックの帯に、ちょっとずつ違う静止画を連続して並べ、それを専用の映写機で映写することで動く映像が再現されます。走り始めたのと同じように長男の誕生をきっかけとして、8mmフィルムで毎月1本24ヶ月間、息子の成長を撮り続けたことがあります。古いフィルムの修復技術者として、フィルムを使い続けること、 つまりユーザーがいるということで映画フィルムという絶滅寸前と思われがちな記録媒体を生き延びさせることができると思っていたんですね。そして、もしかしたらその甲斐もあって2018年現在、 映画フィルムは万年筆やレコードと同じように、 書くことや音楽を聴くことの主流が別の媒体になった今も使われ続け、 撮影し視聴し後世に伝えるメディアとして確かな存在感を発揮しています。僕はそんなフィルムが大好きなのです。

 

▼僕とイタリア

トルデジアンが単なる山岳レースやトレイル・ランニングの大会だったら、恐らく「8mmフィルムを持って参加しよう」という決心はしなかったと思います。ではなぜ、これほどまでに魅せられているのか? それは他でもない「イタリア」を走るイベントだったからでしょう。レンタルビデオ屋に通いつめ、映画を見まくっていた高校生の頃、心に残ったのは40年代〜50年代の暗くて重いイタリア映画でした。「外国語でも勉強しながら、将来のことをゆっくり考えようかなあ(先延ばしにしようかなあ)」と考えていた受験生は、音楽のような言葉と美しい映像(イタリア女優!)で苦い映画を作る人たちが暮らすイタリアに興味を持ち、大阪外国語大学に進学してイタリア語を学ぶことにしました。入学当初は「イタリア語の次はフランス語かなあ、でも北欧も良いし、モンゴルなんかも異世界だなあ」と、イタリアにさっさとけじめをつけて、広い世界に次々にアンテナを広げている自分を想像していました。もちろん、最初の授業でその想像は霧散し、以降、落ちこぼれとなった僕とイタリアの暗黒時代がいきなり続きます。それでも初めての海外旅行でイタリアに9ヶ月滞在してからは、遅まきながらやる気を取り戻し、大学院に進んでイタリア映画の研究者の卵になります。結局その卵は孵ることはありませんでしたが、その頃に同じくイタリア語とイタリア文化を学ぶ仲間と「大阪ドーナッツクラブ(現在の京都ドーナッツクラブの前身)」というイタリアの知られざるお宝文化を日本に紹介するチームを結成し、映画の字幕翻訳や配給のようなことにも関わりました。気がつけば、大学入学当初の「けじめ」などつくはずもなく、イタリアとの付き合いはすでに20年以上になりました。そんな僕にとって、言葉の通じる外国であるイタリアは第二の母国ともいえ、「イタリアのマラソン大会に出たい」と思うのはとても自然な成り行きだったのです。でもまさかそのマラソン大会が、フルマラソンよりずっと長いウルトラマラソンの山岳レースになるとは思ってませんでしたが。

 

 

▼走ることと映画とイタリアを結びつけるプロジェクトでもあるのです

ジョギングとフィルムと第二の母国。 今の僕を支えるその3つをひとつの成果にするために、 現実離れした空間とそこにいる僕自身を含めた人々をフィルムで撮影するプロジェクトが今回の企画です。イタリアはアルプス山脈の麓、ヴァッレ・ ダオスタ州を約6日間150時間かけて330km走るレース「トルデジアン Tor des geants」に8mmフィルムとカメラを持って参加・、完踏を目指します。 世界中の猛者たちでさえ毎年の完走率は6割前後ともいわれる超絶過酷なレースです。「苦しくなければトルデジアンじゃない!」なんていう無茶苦茶な合言葉も聞こえる修行の旅です。 残念ながら過去にはレース中に命を落とした参加者もいます。「出てみようかな」 と思うだけでもぐったり疲れてしまうようなイベントですが、 40歳になった2018年に完踏することを目指してこの数年を生きてきました。

 

「日々の暮らしも、子育ても、(あるいは仕事さえも?)全てがトルデジアン完踏への道」

自分の走力向上のために息子を重石代わりに背負って山を歩き、 自分のフォーム改善の師匠にすべく息子を裸足で走らせ、 会社の内履きを5本指のトレーニング・シューズにしたり、大阪の勤務先から京都の自宅まで走って帰ったり、 会社の地下から屋上まで階段を走ったり、六甲山全山縦走に裸足で挑戦したり、 三度取得した育児休業中も育児と家事の合間にトレーニングしたり(現在三度めの育児休業中)、フィルムのイベントを企画運営したり、すべてがトルデジアンという山岳レースに続く道でした。あるいは大学でイタリア語を専攻した時から、その道は始まっていたのかも知れません。ありとあらゆるものをトルデジアンにこじつけて、8mmフィルム持参のトルデジアン完踏をこれまでの人生のハイライト・ピーク・ 到達点のひとつにしようと考えています。子育てとトルデジアンの関係については、こちらで語っています。

 

「何を目指しんだよ、お前は!?」とよく聞かれます

「何のためにそんなことするの?」 そう不思議に思われるかも知れません。これまで書いてきたことをこねくり回して気の利いたことが言えれば良いのですが、今はこう記すに留めます。偶然、登山家マロリーがよく似たことを言ってたみたいですね。

 

「そこに山とフィルムがあるから」

 
▼支援をお願いする理由

「そこに山とフィルムがあるから」と書きました。 確かに山はそこにあります、アルプス山脈の4, 000m級の山々がどど〜んと(トルデジアンでは登頂はしませんが3, 000mは何度も超えます)。ところがフィルムは買わないと、ない。「フィルムがあるから」と書きながら、手元にまったく、ない。スマートフォンやデジタル・ カメラで撮影することが世の常識となった現在では理解されにくいことかも知れませんが、8mmフィルムで撮影するためには、 撮影機であるカメラと映像を記録するフィルムを購入しなければなりません。日々新製品が発表され、 青天井に画質が向上する画像を無料で撮れるスマフォ& デジカメ時代にあって、 約3分間撮影するための8mmフィルムは5,000〜6, 000円ほどのお値段です。150時間の制限時間の競技中、昼夜を問わず常にカメラを回し続けるためにはどれだけフィルム代がかさむのか、考えただけでもゾッとしますし、そもそもアルプスで撮影しながら走ることは命の危険も伴うため現実的ではありません(1日の何割かは真っ暗な夜道ですし)。とはいえ、1日のうちに何度となく訪れるであろう絶景、忘れたくない人たち、僕自身の調子の変化や心の揺れ、そうしたものをフィルムで記録するのであれば、1日1本というわけにもいきません。そこで僕の挑戦に関心や興味を寄せてくれる人たちに支援(主にフィルム代)を募り、1日に5本から10本くらい撮影できたら素晴らしいなと考えました。撮影するために出場するわけではないので本末転倒は避けるべきですが、みなさんからの応援とフィルムが、トルデジアンの完踏のモチベーションのひとつになることは間違いありません。

 

▼これまでの活動

【公式記録】

*裸足10km 1時間6分4秒 @果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会2014

*ハーフマラソン 1時間58分36秒 @果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会2013

*フルマラソン 3時間28分7秒 @京都マラソン2016

*裸足フルマラソン 3時間56分30秒 @福知山マラソン2016

*100kmウルトラマラソン 12時間36分7秒 @歴史街道丹後100kmウルトラマラソン2016

 

【その他の大会記録】

*京都高尾マウンテンマラソン(裸足ハーフ) 2時間12分45秒(2017年)

*比叡山インターナショナルトレイルラン2015(50km) 10時間2分10秒

*第22回鯖街道ウルトラマラソン(77km) 10時間38分47秒

*2017バーティカルワールドサーキット大阪大会ハルカススカイラン 14分12秒

*裸足100km世界記録チャレンジ10時間走 78.8km(2015年)

*いにしえの道・奈良〜京都100km遠足 12時間54分59秒

 

【その他の単独走や山行】

*大阪の勤務先〜京都の自宅を帰宅ジョグ約60km

*自宅〜嵐山〜箕面50km走(30kmほど道を誤り、計80km)

*六甲山全山縦走単独走40km

*山手線1周ジョグ40km

*琵琶湖1周200km単独走

*自宅発着京都1周トレイル100km単独走

*ダイヤモンドトレイル単独走70km

*裸足六甲山全山縦走40km(大阪の勤務先から須磨浦公園まで走り合計で100km)

 *武奈ヶ岳西ルート(京都側)を裸足で登頂

 

【映画とフィルムに関わるもの】

*ホームムービーの日in京都/亀岡/宝塚(2011年〜2015年)

*日本未公開のイタリア映画の字幕翻訳・公開・配給

 

▼資金の使い道

下記準備費用に充てます。

*8mmフィルム(最大50本、約150分相当を予定)

*撮影・編集機材(カメラ/キャリーバッグ/電池/付属品ほか)

*完踏のための装備拡充(ウェア/必須携行品など)

*国内遠征費用(京都以外での高度順応など)


▼リターンについて

応援いただいた皆さんに報告書を兼ねたお礼メールをお送りします。また、金額に応じて、撮影したフィルムの編集版に出資者のお名前を掲載し(希望者のみ)、またフィルム上映会と報告会(京都と東京を予定)をご案内します。

 

▼今後のスケジュール

*7月下旬 プロジェクト(支援募集)開始

*8月上旬 上映会&報告会の概要決定(日程・場所・内容など)

*9月9日〜16日 トルデジアン

*10月〜 フィルム編集作業

*11月〜12月末(予定) 報告書送付および報告会開催


▼最後に

 時は流れ、僕の「成長したい気持ち」を刺激した長男は7歳になり、今では3人になった息子(7歳・3歳・0歳)がそれぞれ生まれ、目を開け、首が座り、寝返りをし、ズリ這いをし、離乳食を食べ、つかまり立ちをし、歩き、言葉を話したように、これまでできなかったこと、やったことのないことに挑戦する限り、父親である僕だって成長できると信じています。その成長が僕の場合はたまたま「トルデジアン完踏(8mmフィルム撮影付き)」だった。共感を得難い、理解され難い挑戦と成長ではあるけれど、たくさんの方々に応援いただき見守っていただければ、こんなにうれしいことはありません。

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