■はじめに

こんにちは、NPO法人ピルコンの染矢明日香です。

私は、大学生の頃に思いがけない妊娠と中絶を経験したことをきっかけに、日本の性教育への問題意識を持ち、現在は大学院で公衆衛生について学びながら、NPOで性の健康の啓発活動を行っています。

これまで若者ボランティアと共に、中高生向けに身近な目線で伝える性教育プログラムを学校や専門家と連携しながら、のべ4万人以上に講演を届けてきました。

2015年に『マンガでわかるオトコの子の「性」』という書籍を出版し、現在10刷の増刷をいただくロングセラーとなっています。また、クラウドファンディングでAMAZEという世界中で活用されている性教育動画の日本語翻訳プロジェクトLINEでの妊娠相談サービスの開発・提供も進め、緊急避妊薬のアクセス改善を目指す「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の共同代表として、政策提言や情報発信を行っています。


AMAZE 大人から子どもまで楽しく学べる性教育アニメ

ピルコンにんしんカモ相談

講演・イベントや書籍、サイトを通して、避妊や性感染症、性的同意の大切さについて、たくさんの人たちから「知れてよかった」という声をいただいてきました。

■日本の性教育の課題

日本における性教育は、国際的にも遅れている状況があります。

世界の多くの国で、性教育は人権教育としてカリキュラムに基づき学ぶ「包括的性教育」に進展しています。包括的性教育は、子どもたちの健康・幸福の実現を目指し、性に関する幅広い内容を、科学的根拠と人権尊重をベースに、幼いころから段階を追って深く学ぶ性教育です。

しかし日本では、学校教育の最低基準を示す学習指導要領には、性教育に関する内容はごくわずか。そして、性交や避妊について、小学校・中学校では全員に共通して教えるべき事項ではないとする「はどめ規定」の記載があり、学校で性に関することを教えるタブー感があります。また、保健体育を中心に教えられている性教育は、生物学的な内容が中心で、人間関係やジェンダー平等などについては十分に含まれていません。(出典・参考:『教科書にみる世界の性教育』(かもがわ出版))

2022年にピルコンでは教員向けの包括的性教育教材のポータルサイト「ライフデザインオンラインを立ち上げ、100名を超える教員の方にご登録いただいていますが、日本全体から見れば、ごくわずかな数です。

そして、性教育講演においても、これまで貧困や虐待などの課題を抱え、大人から大切にされてきたと思える経験が乏しい子たちにも出会ってきました。

講演でいただける1時間ほどの時間で、「何が本当か分からないなかで、正しい知識が知れてよかった」「具体的な経験談や動画が参考になった」「自分も相手も大切にしたい」などポジティブな感想を多くいただいています。ですがその一方で、中高生になって初めて性の知識を伝えても、自分の健康を守る行動に結びつくことが難しい子どもたちもいます。背景には、知識だけではなく、貧困や虐待などの環境要因から、普段の生活でかかわる保護者・身近な大人たちに幼少期から「自分は大切にされている」「自分は大切な存在だ」と感じられるかどうかが重要だと感じてきました。

また、家庭での性教育について、「2021年全国おうち性教育実態調査」によると、プライベートパーツ、月経、射精、避妊、ジェンダー平等、性の多様性など、多くの項目で「家庭と学校の両方で教えるべき」とする未就学児の保護者の割合が7~8割となりました。

その一方で、子どもへの性器のケアの仕方や誕生についてどう教えるべきか困ったという保護者の声も挙がっています。私たちも「性教育の大切さは分かるけれど、何をきっかけに子どもと性の会話を始めていいかわからない」という性教育のきっかけ作りに悩む保護者の声も多くいただいてきました。

大人自身も学びながら、子どもが幼い時から繰り返し、安心して性について学ぶ機会を作っていくことが必要です。

そこで、かるた遊びを通して、対話的に幅広くこころ・からだ・性のこと、関係性のことを学べる健康教育教材「ここからかるた」を考案、開発しました。

■ここからかるたとは?

ここからかるた紹介ページより

ここからかるた」は、国際的な包括的性教育の指針であるユネスコ「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づき、製作しています。

乳幼児期の性教育の専門家にも監修いただき、「こころ」「からだ」「あんぜん」「ひととのかんけい」の4つのグループから構成され、5歳から幅広く学べる内容になっています。

▼ここからかるた遊び方紹介動画


ここからかるた「あそびかたガイド」より

また、「ここからかるた」の取り札の裏には「お題」をつけています。
通常のかるた取りの遊び以外にも、取り札に関連するテーマについて話すことを促し、自然と話せるような遊び方もできるように工夫しました。

ここからかるた紹介ページより

「ここからかるた」を通して、一つの決まった正解があるわけではなく、こころやからだの様々な見方、考え方、表現の仕方があると楽しみながら発見していくことができます。

また、からだの部位やはたらきについてもあわせて学べるように、医師監修の「からだガイド」を付録として付けました。

ここからかるた「からだガイド」

■児童養護施設や困難な状況にある家庭での性教育の課題

厚生労働省の調査によると、児童相談所での虐待相談件数は年間で20万件を超え、ここ20年ほどで増加の一途をたどっています。虐待の通告があったなかでも、特に深刻なケースの子どもは保護され、児童養護施設等の施設に入所したり、里親に養育されたりすることになります。全国では約600ヶ所の児童養護施設で2万人以上の子どもたちが過ごしています。

子どもたちが受ける虐待には、性的な虐待も含まれるケースもあり、またある県の児童養護施設を対象におこなった調査では、18施設中17の施設(94.4%)で過去に性的問題が発生していたことがわかっています。一部では性教育を実施している施設もありますが、実施が難しいと答える施設も少なくありません。

また、東京都の調査では、ひとり親や経済不安も虐待のリスク要因になることが指摘されています。ひとり親家庭が性教育に悩む声も多くあり、困難な状況にある家庭や子どもにこそ、性教育は必要です。

■このプロジェクトで実現したいこと

近年はインターネットやIT機器の普及によって、子どもたちにとって性情報はより身近なものになっています。子どもたちの多くは小学生の段階で性情報に既に接しています。
そして、学校での性教育が国の政策として積極的に進まないなか、家庭における性教育は、保護者の関心の高さにバラつきがある状況です。

特に、家族との関係や経済的な難しさを抱える児童養護施設や、子ども食堂、ひとり親支援団体等で支援を受ける子どもたちにとって、権利の視点から肯定的に性の健康のことを学ぶことは大切で、より手厚く充実したサポートが必要です。

そこで、このプロジェクトを通して、希望する全国の児童養護施設・子ども食堂・ひとり親支援団体に「ここからかるた」を届けたいです。

「ここからかるた」のようなカード教材は、書籍よりも製作のコストがかかり、あまり手軽に購入できる単価とは言えない価格(税込4,180円)です。しかし、包括的性教育のニーズが高い子どもたちにこそ届けることで、幼い時からこころ・からだ・人との関係を大切にする土台を作ることを目指したいです。

下記のフォームから、200箇所を目標に、「ここからかるた」の提供を希望する児童養護施設と子ども食堂、ひとり親支援団体を募集します。(申込期限:2022年9月25日を予定/提供先としてひとり親支援団体を9月21日に追加いたしました)

ここからかるた 提供先募集申込フォーム

既に児童養護施設では子供の家様(東京都)、一宮学園様(千葉県)、同仁会子どもホーム様(茨城県)、子山ホーム様(千葉県)、片瀬学園様(神奈川県)、クリスマス・ヴィレッジ様(東京都)、品川景徳学園様(東京都)、社会福祉法人神戸真生塾様(兵庫県)、仙台天使園様(宮城県)、子ども食堂では、せんだいこども食堂様(宮城県)、上高田みんなの食堂様(東京都)、NPO法人オハナプロジェクト様(埼玉県)、こども食堂青空様(福井県)、一般社団法人えんまん様(福井県)、特定非営利活動法人かさじぞう様(福井県)、たきお子ども食堂様(大分県)、阿佐ヶ谷ガヤガヤ食堂様(東京都)、風の子めむろ様(北海道)、NPO法人未来経験プロジェクト様(東京都)、NPO法人レインボーリボン様(東京都)、ひとり親支援団体ではNPO法人シングルマザーズシスターフッド様(東京都)などに提供のご希望をいただいています。

ピルコンでは、これまで児童養護施設で子ども向け・職員向けのプログラムの実施も行ってきました。より多くの機関への周知をするため、ピルコンでつながりのある児童養護施設・子ども食堂、ひとり親支援団体や他の関連団体にも、呼びかけのご協力をお願いします。

もし、想定を超えるお申込があった場合は、提供先は抽選とさせていただけたらと思いますが、できるだけ、より多くの目標金額を集めるようにし、応募のあったところにはお届けできればと思います。

性教育が特別なことではなく、普段の生活の延長上にある大切なこととして、大人も学びながら、子どもと安心して学べるツールとして広げていきたいと思います。

■資金の使い道

いただいた資金は、以下のように活用させていただけたらと思います。

●ここからかるた商品・送料・・・・・・・111万円(200箇所を想定)

●リターン製作・印刷費・リターン送料・・33万円

●プロジェクト運営に関わる人件費・・・・10万円

●その他雑費・予備費・・・・・・・・・・2万円

●手数料・・・・・・・・・・・・・・・・約14万円

合計:170万円

※目標金額を達成しなかった場合は、提供するかるたの数量を調整させていただきます。

■実施スケジュール

2022年9月 プロジェクトスタート・提供する施設・団体の募集

2022年9月30日 プロジェクト終了

2022年10月 申込いただいた提供先にかるたを送付

2022年11月 提供先からのメッセージブック作成

2022年12月頃 支援者にリターンのご送付

<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

■リターンの紹介

いただいたご支援の金額によって、下記のリターンを提供させていただきます。

●3000円のご支援:

・サンクスレター(Eメール)


●5000円のご支援:

・「ここからかるた」シール 1枚

・サンクスレター

・活動報告・提供先からのメッセージをご送付

※画像はイメージです。A5サイズになります。

ここからかるたの絵札をモチーフにしたシール(15絵柄程度)です。スマホケースやマイボトル、お手紙、お子さんとの遊びなど、広くご活用いただけます。


●10,000円のご支援

・提供先の施設からのメッセージフォトブック 1冊

・「ここからかるた」シール 1枚

・サンクスレター

※画像はイメージです

ここからかるたを提供した施設から、写真1枚+メッセージを掲載したメッセージブックを作成し、お送りさせていただけたらと思います。(文庫本サイズ/24Pの予定)


●30,000円のご支援:

・考案者染矢のサイン付「ここからかるた」現物1点 

・提供先の施設からのメッセージフォトブック 1冊

・「ここからかるた」シール 1枚

・サンクスレター


●100,000円のご支援:

・考案者染矢による講演(90分程度・交通費別途) 

・考案者染矢のサイン付「ここからかるた」現物1点 

・提供先の施設からのメッセージフォトブック 10冊

・「ここからかるた」シール 10枚

・サンクスレター


●300,000円のご支援

・かるたイベントを共催(120分程度・交通費別途) 

・考案者染矢のサイン付「ここからかるた」現物2点 

・提供先の施設からのメッセージフォトブック 20冊

・「ここからかるた」シール 20枚

・サンクスレター


■応援メッセージ

●デザイナー 北山瑠美さん

「子供のからだと性のお話」と聞くと、どう教えたらいいかわからない、きっと学校が教えてくれるはず、という感想を持たれる方も多いのではないでしょうか。今回このかるたのデザインのお話をいただいた時に考えたのは、今までのかるたとは違う形状、大人も子供も楽しく学べるイラストであることが重要だと感じました。
このかるたのように従来の型にはまらず、たくさんの可能性が広がりますように。そして、たくさんの方が「こころ」・「からだ」・「性」のだいじを楽しく学べますように。
プロジェクトの皆さんの熱き想いに是非ご賛同ください。

●出版社 合同出版 編集部 副島春乃 さん

誰にとっても分かりやすい教材にするために、染矢さんはじめ監修者、デザイナーの皆さまと何度も何度もやり取りを重ね製作しました。
ちょっとした言葉づかいや表現、イラストのタッチ、文字の配置に至るまでこだわりぬいて作ったまったく新しい性教育教材です。
このプロジェクトを通じて、自分のこころやからだに親しむ「はじめのいっぽ」を多くの子どもたちに届けることができたら嬉しいです!

●産婦人科医 柴田綾子先生

【遊びながら自分の体や性について学べる教材をすべての子どもに届けたい】

日本では「自分の体の変化や妊娠・避妊」について学ぶタイミングがあまりありません。

でも、自分や相手の体を大切にするためには、まずは思春期の男女の体の変化について知り、性や避妊について正しい知識を学ぶことが大切です。

このカルタは、遊びながら体や心、性について学ぶことができます。カルタを使って他の人とコミュニケーションをとりながら、自分や相手の体や心について学ぶこと、性や避妊について恥ずかしがらずに話し合う機会を作ること。このようなチャンスを、児童養護施設やこども食堂など、沢山の子どもに届けられたらと思っています。

●監修者 艮香織さん(宇都宮大学共同教育学部教員)

性のことは生きることに関わっていて、本来、楽しいことです。

子ども同士、おとなと子ども、おとな同士でこのかるたを通してやり取りをすることで、きっとたくさんの発見があるはずです。

性は生きることに関わっていて、性教育は本来であれば誰もが保障されるのがあたりまえのこと(つまり権利)です。しかし日本ではまだ、学校や家庭での性教育がすべての子どもたちに保障されているとはいえません。今回のクラウドファンディングを通して、性のテーマを通して、子どもの権利を保障する一歩となりますように。

心から応援しています。

●パレットーク編集長・合田文さん

性に関することを恥ずかしいこととして敬遠してしまう前に、周りの大人との共通言語としてこのカルタがたのしく機能してほしいと思っています。 

意外と小さいときに触れた遊びや言葉は、大人になっても自分の幹を作っていると実感することがありますよね。

たくさんの子供たちや子供と過ごす大人たちの手に届くことを祈っています。


■最後に

私自身、6歳の子どもがいます。保育園で遊んでいるかるたの札のフレーズを、家でも楽しそうに繰り返しているのを見て、包括的性教育を幼少期から遊びながら学べるツールとして「ここからかるた」を考案しました。子どもにも理解できるように伝えるにはどう表現したらよいか、とてもチャレンジングでしたが、専門家の方や子どもからもアドバイスをもらい改良を重ね開発しました。今では「ここからかるた」の遊びを通して、子どもからもふとした瞬間に「ここからかるたではこう言っていたよね」と話してくれています。そのようなあたたかい学びの時間を、様々な環境で育つ子どもたちに届け、「自分は大切にされる価値がある」という実感を持ってほしいです。性をタブーではなく、自分や他者と向き合い、人生をよりよく生きていくための大切なこととして一緒に広めていけたら嬉しいです。

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください