みなさん、こんにちは。私たちは労働問題に取り組むNPO法人POSSE(ポッセ)です。
 今回、過労死遺族の方たちが労災の補償を受けられるようサポートするために、クラウドファンディングを始めさせていただきました。

■激増する過労死・過労自死は「氷山の一角」

図表1 過労死・過労自死の労災申請数の推移

 今年、日本を代表する有名大企業から中小企業に至るまで、さまざまな過労死・過労自死の報道がありました。過労死・過労自死は、長時間労働やハラスメントなど、業務を理由として脳や心臓の疾患、精神疾患に罹患してしまい、亡くなってしまうことを指します(被害者が一命を取り留めたものも本記事では含んで説明します)。

  この被害が年々増加しています(図表1)。厚労省が発表している、業務による精神疾患の労災申請件数に着目すると、2019年度には2000件を超え2008年からの11年で2倍以上、2001年からの18年で約8倍にまで激増しました。脳・心臓疾患の労災申請の件数は700〜900件あたりで高止まりし続け、2019年度には936件と1000件に迫る勢いです。
 しかし、こうした合わせて3000件もの数すら、膨大な過労死・過労自死事件の氷山の一角に過ぎません。なぜなら、労災申請にまでたどりつけない遺族の方たちが圧倒的に多いからです。

■多くの遺族の方たちにとって、労災申請にたどり着くまでが困難

 家族が亡くなったり、心身を破壊されてしまったりしたのに、なぜ労災申請ができない方が多いのでしょうか。遺族や存命の当事者の方には、労災補償制度のことをよく知らなかったり、自分の場合は使えないと思い込んでいたりという人が少なくありません。会社に教えてもらえる機会などほとんどなく、亡くなられる方を出してもなお、遺族の方たちに労災制度を積極的に紹介することはまずないと言って良いでしょう。

 それどころか、ひどい場合には、被害者が亡くなった直後に会社からわずかな「見舞金」を渡されて「労災を申請しない」と無理矢理に約束させられてしまったり、なんとかたどりついて労災相談をした労働基準監督署の職員から「証拠がないなら難しいです」「会社が協力がないと受け付けられません」と、申請を事実上断られたりするケースまであります。

 このように会社、さらには労基署の職員までもが、遺族の方たちの申請を事実上「妨害」する実態があります。

 いったい、労災申請ができないまま埋もれてしまった被害事例がどれだけあるのか、全体像を把握することはできません。ただし、労働問題によって自死した人についてはデータがありますので、目安を示すことはできます。厚労省「過労死等白書」の最新版から「申請率」をざっくりと推測してみましょう(図表2)。警察が自殺者のうち「勤務問題」を原因・動機の一つとして判断した件数と、自殺(未遂含む)のうち労災が申請された件数を比較してみます。
 すると、ここ5年ほどは前者が2000件数前後であり、後者が200件前後であることがわかります。つまり、労働問題を理由とした自死者のうちの「約1割」、年によってはそれ以下の割合しか、労災が申請されていないと言えます。
図表2 過労自死の「労災申請率」 しかし、この労災の補償がなければ、生活は過酷なものになってしまいます。残された遺族の方たちは、配偶者や親、子どもの命が失われた悲しみや苦しみと直面するだけでなく、生計を支え合っていた家族を失ったことで、その後の自分たちの生活困窮のリスクとも対峙しなければならなくなります。もし被害者の命が助かったとしても、その家族はもちろん、心身を破壊され就労が困難になった当事者自身にとっても、大変な生活が待ち受けることになります。このように、労災の補償を受けられることは、残された方たちにとって非常に重要なことです。

 そこで私たちNPO法人POSSEでは、過労死・過労自死の労災の補償を遺族の方たちが受けられるようにサポートする活動を行っています。


■POSSEによる過労死遺族への支援のこれまでの取り組み

写真 過労死事件について、遺族と弁護士、POSSEで厚労省で記者会見を実施しました 私たちNPO法人POSSEは、2006年に発足し、今年で15周年を迎えます。若者を中心とした労働問題に取り組んできました。東京と仙台に事務所を構え、全国から電話やメールを通じて労働相談や生活相談を無料で受け付けており、その数は毎年3000件近くに及びます。

 2013年には代表の今野晴貴が執筆した『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)がベストセラーになり、流行語大賞にもノミネートされました。「ブラック企業」問題が解決すべき社会問題として認知され、政府も「働き方改革」を進める大きなきっかけとなりました。

 また、今年3月、毎日新聞社が共催する「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」においては、「第8回エクセレントNPO大賞」「市民賞」の2賞を受賞いたしました。

 さて、そうした活動の一環として、私たちはこれまで過労死遺族の方による労災申請の支援や、会社に対する損害賠償請求訴訟の支援をしてきました。過労死問題は、日本の過酷な労働問題の最たるものであり、特に力を入れています。
 具体的には(1)遺族の方のヒアリングを行って、被害者の方が亡くなるまでの状況や証拠を整理する、(2)労働基準監督署への労災申請に同行して、申請のアドバイスをする、(3)裁判支援、(4)メディアに発信して社会的に事件を啓発する、などのサポートをしています。そして(5)権利行使をしていく中で、遺族の方が不安を抱かれる際の心理的なサポートも非常に重要です。

 [POSSEの支援を受け、10年かけて父親の過労死訴訟をたたかった20代男性の声]

 実際に現在、POSSEの支援を受けながら、父親の過労死事件について争っている20代の男性の声を紹介します。

 2011年、私が15歳の時、父は51歳で過労死しました。亡くなった後のタイムカードを見ると、月の残業は80から100時間ほどで、国が定める過労死ラインを超えていました。翌年には労災認定がされました。2017年、過労死の責任追及をするため、自分が原告となって父が働いていた会社を提訴しました。今年1月に出た高裁判決では、請求していた5割の金額と取締役1人の責任を認めさせることができました。現在は最高裁に上告をして結果を待っています。

 裁判は非常に精神的負担が大きく、POSSEの支援を受けていなければ途中で諦めていたと思います。過労死問題に詳しい弁護士の紹介、情報発信、傍聴などの支援を受けたことで裁判を有利に進めることができ、精神的にも支えられました。

 本当は父を亡くした高校生の頃から裁判を起こしたいと考えていたのですが、どこに相談すればいいのか分からず、それに未成年だったこともあって行動を起こすことができませんでした。私のように、家族の過労死の責任追及をしたいと考えている過労死遺児は他にも大勢いるのではないかと思います。若い世代の過労死遺児から相談を集め、共に過労死問題に継続して取り組んでいくことが、社会から過労死をなくすことにつながっていくと思います。

 ご支援よろしくお願い致します。


■このプロジェクトで新たに実現したいこと

 私たちNPO法人POSSEでは、これまで上記のような過労死遺族の支援を行う中で、遺族の方たちが私たちの相談窓口にたどり着くまでに、かなりの苦労をされていたというケースに何度も遭遇しました。過労死・過労自死について簡単に相談できる相談先が、あまりに知られていないのです。

 前述のように、過労自死の1割以下程度しか労災申請を行えていないのが現状です。より広く過労死・過労自死の相談窓口が知られていれば、制度利用をあきらめてしまったり、会社に騙されてしまったり、労基署に萎縮してしまったりしないで済むのではないでしょうか。

 そこで私たちは、過労死・過労自死について相談体制と啓発活動を拡充することに決めました。特に、若い世代の遺族に届くように力を入れていこうと考えています。私たちのもとには、中高年の労働者が過労死・過労自死で亡くなったのち、その10代〜30代の遺児から労働相談がくるというケースが相次いでいます。また、これまでは過労死・過労自死が比較的少なかった20〜30代の労働者の配偶者からの相談も増えています。若い世代でも過労死・過労自死に対する被害が広がると同時に、問題意識が高まっていると感じます。とりわけ、こうした方たちに情報が届くように、今回のクラウドファンディングを役立たせていただきたいと考えています。
 そして、できるだけ過労死・過労自死の被害が深刻化する前に、こうした情報が当事者や家族に届くことで、過労死・過労自死を未然に防いでいきたいと考えています。

 新たに拡充する活動内容は以下の通りです。

 (1)相談体制強化:過労死・過労自死問題に対応できる相談員を育成します。
 (2)zoomを用いて気軽に話をできるオンライン相談会を開催します。
 (3)過労死ホットラインの実施回数を増やし、その宣伝活動を拡充します。 
 (4)オンラインセミナーを実施し、その宣伝活動を拡充します。
 (5)Youtube、Instagramなど若手世代のインターネットメディアに、過労死問題についての啓発動画を作成して定期的にアップロードします。


■実施スケジュール

2022年1月 オンライン啓発動画第一弾を作成・公開(以降、毎月動画をアップロード)
        労災オンラインセミナーの開催・宣伝
        zoom相談会・ホットラインの実施
    3月 労災オンラインセミナーの開催・宣伝

■資金の使い道

(1)人員体制の整備に必要な諸経費(専門相談員の人件費、育成費や交通費等)
(2)通信費、消耗品費(労働相談に対応するための電話代、ホットライン代、ファックス代、コピー代等)
(3)広報費(デザイン費・動画制作費等)
 労働相談増加のための活動周知に必要な動画作成などのための広報費
(4)イベント開催費
 過労死遺族や、過労被害の当事者が労災制度や法的な権利について専門家と一緒に共有・検討するイベントにかかる費用(施設代・講師代・オンライン経費・宣伝費等)
(5)手数料等
・GoodMorning掲載手数料
・GoodMorning決済利用手数料

<All-in方式で実施します。>

 本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

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