はじめに・ご挨拶


こんにちは
オリィ研究所の吉藤です。
分身ロボット「OriHime」や分身ロボットカフェ、電動車椅子、難病の方向けの意志伝達装置などの開発を行っていますが、今回いろいろと福祉機器を作っている中で便利な名刺ケースが生まれ、実際に使ってみて便利だったので更に完成度を高めて量産したいと思い、プロジェクトを立ち上げました。


今回のクラウドファンディングはプロトタイプ量産の第一弾、ベータ版です。
個数限定でテスト量産し、使っていきながらアイデアを深め、一緒に作っていってくれる仲間を募集します

名刺の登録が面倒くさい問題

多くの社会人は、名刺交換をします。
私も16歳で自分の名刺を作ってからこれまで16年、何千枚配ったかわかりませんし、何千枚貰ったかわかりません。

名刺交換そのものは別に良いのです。クリエイター仲間との名刺交換はデザインも凝ってて面白い。
ただ、名刺交換の何が大変かというと、そのあと名刺を登録するために名刺ケースから出してテーブルに並べたり、読み取りマシンに入れないといけないという事。

名刺管理アプリも使っていますが、名刺をあとで並べて写真を撮るという作業を毎回律儀にするかと言えばそんな事はせず、名刺読み取りの機械がオフィスにあってもついつい入れるのを忘れてしまい、机の端に未登録名刺タワーが詰みあがってしまうのが私です。

また、特殊なケースかもしれませんが、私は仕事柄、ALSや頚損など重度障害で車椅子を使っている友人や、分身ロボットを使って働いている友人が多くいます。
彼らと共に患者会や講演イベントなどに行く時、彼らが名刺をもらう事があるのですが、腕の自由がきかない本人の代わりにそれを受け取り、データ化して送ってあげる作業を私がよくやっていました。友の為なら全然面倒とは思わないけど、正直ちょっと時間はかかるし、名刺交換をして登録してあげる度に彼らから「すみません」と言われるのも気が引ける。

そこで思った。

名刺というカードが日の目を見るのは、名刺交換をしたその一瞬だけといっても過言ではない。
なら、名刺を受け取ってちょっと喋っている5秒以内に違和感なくスマホに取り込んでしまえば、あとで名刺を出して撮影する必要がなくて楽じゃないか、と。


それで開発してみたのがこの「オリィの名刺ケース(仮)」


名刺ケースにカメラ(上図の黒い丸部分)を搭載し、ケース側面のボタンを指で押す事により、名刺を受け取った瞬間に撮影、名刺の画像データはそのまま自動的にスマホに送信されます。


名刺交換中のわずかな時間に取り込みが完了するので、あとで机に並べて写真を撮ったり、名刺読み取りの機械に入れる必要はありません。


更に、リアルタイムで登録する事により受けられる恩恵は名刺の簡単な登録だけではありません。


突然ですが、私は人を覚える事がめちゃくちゃ苦手です。


いつ、どこで名刺交換した人か思い出せない。
あるいは、会った場所は覚えているが名前が思い出せず連絡先を探せない問題。


私は昔から人に対する記憶力が自信ないので、後で名刺ホルダーに整理した名刺を見ても、ほとんどの場合誰だっけこの人・・・と思ってしまったり、逆にあの時あの場所で出会った人、名前なんだっけ・・・と忘れてしまって名刺を探せない事もしばしばあります。
SNSで友達になっても、連絡とらず1年も立つ頃には誰だっけこの人・・・となってしまう始末。

この名刺ケースは、貰ったその瞬間にスマホに転送するため、
秒単位での交換した日時のデータと、GPSによりどこで交換したかを自動的に記録する事ができます。

あとで登録した名刺一覧を見て「この人、どこで会った人だっけ?」と思っても名刺交換した日時と場所を見る事で、記憶を辿る事ができます。また、逆に名前を忘却した場合でも、出会った日時、あるいは場所から名刺データを検索する事ができます。




オリィ式名刺ケース(仮)にできる事と、当プロジェクトで目指したい事


現在はプロトタイプの段階ですが、
以下の事が既にできます。

・名刺交換した時、側面のボタンを押す事で名刺を撮影する。
・名刺は画像データされて、iPhoneのアプリに送信される。
・同時に名刺交換した時間と、GPS情報により場所を記録する。
・相手の名刺データを見ると、出会った時間と交換場所を見る事ができる。
・相手の名前を忘れてしまっても、時間や場所から名刺データの検索が可能。
・設定で画像をスマホの写真アルバムに残す事もでき、他の名刺管理アプリへのエクスポートが可能。
・名刺の画像データの文字情報はOCR技術によって自動でテキスト化。
・登録した名刺は、アプリからそのまま電話をかけたり、メール、書かれたURLの閲覧が可能。
・iPhoneの連絡先への登録が可能。


他にもGoogleカレンダーとの連携や、相手の顔を覚えられる方法など、便利な機能をいくつか思いついているのと、アプリやUIがまだ未熟なので、当プロジェクトを実施しながら改良していきます。

※現在はプロトタイプなのでiOSのみとなっています。今後Androidにも対応しますが今回のβモデルではまずはiPhoneのみ対応となりますのでご了承ください
※いわゆる「名刺管理アプリ」を目指す予定ではないので、クラウドに接続したり、企業情報を登録したり、文字の正確なOCR(自動文字起こし)などは、他の名刺管理アプリと連携して使ってもらえるようにする想定です。


デザインの拘りのポイント:

・片手で名刺をポケットから出し、名刺ケースを開けて自分の名刺を1枚出す事までができるので、怪我・病気などで片腕しか動かす事ができない方も、名刺を1枚取り出すまでを行えます
・蓋面の窓部を指で押す事で名刺を取り出す
・蓋面の窓部から、自分の名刺が切れた事がわかる
・名刺ケースとして違和感なく使えるデザイン
・名刺交換として違和感のある動きをせず、手の中で登録を完了できる
・艶消しのクリア板の下に敢えて基盤部分を露出



プロジェクトをやろうと思った理由


作ってるうちに普通に私にとっても便利なものになった当名刺ケースですが、実は上に書いた通り、もともとは重度障害の親友との会話の中から生まれた発想です。
この機会に、少し紹介させてください。

私には、番田雄太という、2年前に亡くなった寝たきりだった相棒がいました。
番田は4歳の時の事故による頸髄損傷で、首から下が動かせませんでした。しかし2014年から彼はしばしば顎を使ってPCを操作し、分身ロボット「OriHime」を使い、オリィ研究所に毎日出社し、私の秘書を務めていました。

番田はオリィ研究所に入社し、社会人になった記念に念願だった”自分の名刺”を作りました。
本人は寝たきりなので交換はヘルパーや誰かが行い、写真を撮影し、データで番田に送っていました。
「名刺を交換しなくても、SNSで繋がるのとかでよくないか?」と言ったところ、「これは食事の前のいただきますのようなものだから、私もやりたいんだよ」と言われ、なるほどと納得してしまいました。そうかもしれない。

番田は分身ロボットOriHimeで私と講演仕事もしていたので、講演先で名刺交換をする時は私の横に番田OriHimeが居て、私に名刺を渡した後、番田にも名刺を渡される事がよくありました。私が番田の分も名刺を受け取り、その後、名刺を並べて写真を撮影して「君がもらった分」として、彼に転送していました。友の為とはいえ、毎回は正直大変です。

そこで、OriHimeに名刺を読み込ませるアイデアを思いつきました。
OriHimeの下に名刺を出す装置と、名刺を入れてデータ化して操作者である番田に転送する装置のイメージです。また、OriHimeで講演をすると、生身以上に今どこに自分がいるのか実感しにくく、名刺交換した場所を覚えられない問題があるので、GPSを付ける事を考え、そのうち時間ができたら作ろうと思っていました。
 
・・・しかし、そのプロトタイプが現実になるより先に、まったく想像していなかった番田雄太の急逝がありました。
それからしばらくこのプロジェクトはお蔵入りになっていたのですが、その後も番田と同じような寝たきり状態の患者さんらと会う中で、ヘルパーや家族が本人の代わりに名刺を交換し、写真をとってデータ化しているのを見て思い出し、名刺交換を楽にする開発を再開する事にしました。
出来たのがこの名刺ケース、というわけです。

特許も申請し、人を覚えるのが苦手な自分のためにGPSで交換場所を覚えられるようにし、位置情報や日付から名刺を検索できるようにし、もともと、寝たきりの親友の名刺交換補助ツールとして考えていたアイデアは、別に寝たきりじゃなくても普通に便利なものになっていました。



リターンについて:

現時点では開発を応援いただいたお返しとしてプロトタイプ「オリィの名刺ケース(仮)ver.β1」100台程度の生産を予定。
名刺ケースは白ver.と黒ver.をご用意します。
※今回限りの非売のプロトタイプモデルとなります。デザインは多少変更の予定がありますがご了承ください。


先着50名 29,800円+当プロジェクト限定・吉藤オリィ記念名刺
次着50名 31,300円+当プロジェクト限定・吉藤オリィ記念名刺
【追加】25名 32,500円+当プロジェクト限定・吉藤オリィ記念名刺

名刺ケースは要らないけど応援するよと言ってくださる方向け:
吉藤の研究応援プラン 5,000円
吉藤の研究応援プラン 10,000円

講演会スポンサープラン:
名刺ケース+吉藤オリィのスペシャル講演会開催権 600,000円


実施スケジュール:

お届けは2020年の夏を予定しています!

最後に:

ウォシュレットトレイや、片手で付けられるライター、曲がるストローなど、もともとは日常で障害がある人の”福祉機器”として生まれ、普及したものが世の中には多くあります。外出困難な人が社会生活を送るために開発したOriHimeも、今はテレワークとして育児中のお母さんに多く利用されていますし、車椅子のバリアフリーマップ「WheeLog!」はベビーカーを押す親御さんにも広く利用してもらえています。

本当に便利なものは、本当に困った事があるからこそ生まれると私は考えています。
「たかが名刺交換、SNSの交換とかでいいじゃん」と思われるかもしれなくても、寝たきりの親友が言った「社会人になったら名刺を持ちたい」という価値感を否定してはいけない。無理だからと諦めるのではなく、やりたいという強い意志があるから、そこからちょっと便利な仕組みが生まれ、世の中がちょっとずつ良くなっていくのだと思ってます。

この名刺ケースを使っていただき、「その名刺ケース面白いね。」そんな会話から、新しい出会いが生まれる事に繋がれば幸いです。



吉藤オリィ


開発チーム:

Direction &Prototype Development : Ory Yoshifuji
Software:Shiiba Yoshifumi (ORY LABRATORY)
Prouct Design & Development : Yusuke Kamiyama(SPLINE DESIGN HUB), Mariko Higaki

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください